今回は、他の物件との差別化を図ると同時に、コストダウンにもつながるリノベーションのコツについて見ていきます。※本連載は、リズム株式会社アセットソリューション事業部長の寺内直哉氏の著書、『東京1Rマンションオーナー必読! リノベーション投資入門』(総合法令出版)の中から一部を抜粋し、不動産投資におけるリノベーションの基本的な考え方や、費用対効果について紹介します。

魅力的な空間を作り出す「素材」の力とは?

 「新築そっくり」にしてはいけない 

 

この連載では、これまでのリノベーションにおける私の経験上から、「これだけは押さえておいていただきたいポイント」をお伝えしています。続いては、入居者に提供する住空間の話に移りましょう。

 

ここで強調しておきたいポイントが1つあります。

 

それは「新築そっくりにしない」ということです。「せっかく費用をかけるなら最新の建材を使用して、新築そっくりに生まれ変わらせた方がいい」と思う方がいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。

 

新築そっくりにリノベーションしても、差別化にはなりません。当初は新築そっくりでも、入居者が2~3回転して経年劣化してしまえば、いずれ普通の中古物件に戻ってしまいます。

 

ここで大切なのは、市場に数多くある物件に対し、リノベーションすることによって「新しさ」というキーワード以外で差別化を図ることです。そして、その差別化が長期間にわたり保たれるようにすることが肝心です。

 

そのポイントの1つとなるのが、「室内の内装に使う素材や建材にこだわる」ということです。

 

「リノベーション」というと、デザイン面ばかりが強調されがちですが、他の物件との差別化を図りつつ、その状態を永続的に保つためには、「素材」にもこだわっていただきたいのです。

 

 新築が真似できない素材を使う 

 

第4回(関連記事『なぜ東京には「住みたい!」と思う新築物件が少ないのか?』)でも触れましたが、新築物件は不特定多数という「マス」を対象に、画一的なデザインに設計されています。そして、主にコスト的な理由による供給側の意向も伴って、どうしても汎用で安価な建材を使わざるを得なくなるのです。

 

その代表は、部屋の大部分を占める床と壁の仕上げ材です。市場に供給されている部屋のほぼすべてが、合板材のフローリングや化学製品であるクッションフロア、安価なビニールクロスで仕上げられています。こういった素材がすべてダメとは言えませんが、そこには、居住空間が白い壁と茶色い床で彩られているという以外、何も感想は出てきません。

 

たとえば、床材として、本物の木材である無垢材を使用したらどうなるでしょう。薄い板を大量の接着剤で重ね合わせた合板材とは、質感や手触り感がまったく異なってきます。素材そのものの温もりを感じさせる床材は、入居者にどういう喜びを与えてくれるでしょうか。

 

「大正ロマン」という言葉があります。主に大正時代の文化事象や雰囲気を伝える言葉ですが、住宅では当時の内装の雰囲気を総称して使います。今でも老舗の旅館や、当時の文豪が住んでいた記念館などの建物で、その雰囲気を直接味わうことができます。

 

たとえば、東京の世田谷にある「徳冨蘆花(とくとみろか)記念館」でも、明治大正時代に活躍した小説家・徳冨蘆花が住んでいた住居が当時のままの姿で一般公開されています。私も何度か足を運びましたが、その室内は、独特の澄み切った空気に満ち溢れた、何とも言えない味わいの深さがあります。当時は、内装材としての化学製品が発達する前であり、無垢の木材や畳、漆喰といった天然素材がふんだんに使われているためです。

 

こういった本物の素材は、「使えば使うほど味わいが出てくる」という特性があります。たとえば、年数が経つにつれてできる無垢材の細かな凹みや傷は、逆に味わいとなって長く残ります。素材にこだわるリノベーションによって、独特の魅力ある空間を演出することができ、さらにその効果は経年によって醸成されていくのです。

 

市場にある物件に対し、「新しさ」以外での差別化を図り、さらにその効果を長いものにするキーワードの1つは「素材」なのです。

本物の素材は交換不要! 将来的なコストダウンに

 素材にこだわればコストダウンにつながる 

 

ビニールやプラスチックのように、安価で手触り感や素材感が薄く、3~4年での交換を前提とした素材は、市場にある物件との差別化にはなりません。

 

当初はコストがかかっても、入居者の入れ替え時に交換が不要で、経年によって味わいが出る「本物志向の素材」を検討しましょう。そうすることで、退去ごとに繰り返されるチープなリフォームから脱却することになり、長い眼で見れば、コストダウンにもつながります。

 

たとえば、安価なビニールクロスを使用する代わりに、壁をペンキ塗りで仕上げるのも有効な手段です。ペンキで仕上げた壁面は、光の当たり具合によってその表情を変え、奥行きのある魅力的な空間を演出することになります。

 

ペンキ塗りは、最初の施工で、下地の十分な処理や塗りジミを防ぐための日数をかけた重ね塗りが必要であり、相応の手間と費用がかかります。しかし、経年後のメンテナンスは非常に簡単で、入居者自身の手によって、汚れた部分のみを1日の作業で塗り直すことも可能です。ビニールクロスが経年劣化によって定期的に貼り替える必要があることに比べると、先々の費用負担は大きく変わってくるのです。

 

不動産投資は、長期的な視点を持つことが大切です。ポイントをしっかり押さえてリノベーションすることで、新築との差別化に加え、将来的なコストダウンにもつなげることができるのです。

 

<POINT>

●リノベーションでは「新しさ」というキーワード以外で差別化を図る。

●新築では使われていない天然素材は、物件の魅力を高めるのに効果的

●高価な本物志向の素材は長い眼で見れば、コストダウンにつながる。

 

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