今回は、法定耐用年数が47年であるRC物件をリノベーションすることで得られるメリットについてみていきましょう。※本連載は、リズム株式会社アセットソリューション事業部長の寺内直哉氏の著書、『東京1Rマンションオーナー必読! リノベーション投資入門』(総合法令出版)の中から一部を抜粋し、不動産投資におけるリノベーションの基本的な考え方や、費用対効果について紹介します。

RC造の賃貸物件…本当の耐久性は?

 鉄筋コンクリート造の耐久性 

 

ここまでは、スケルトンリノベーションを中心に解説してきました。

 

物件を一度スケルトン(構造体)の状態に戻して、一から造り上げる施工方法は、築20年を超えるような物件には最適です。ただし、室内をほぼすべて一新するということは、当然、それ相応の費用がかかることになります。

 

そうなると、「そもそも自分の中古物件をリノベーションする意味が、果たしてどれだけあるのだろうか」と考える人がいてもおかしくはありません。「築年数が経過した物件をリノベーションしても、建物が古すぎるため、内部だけを施工する価値がもうないのでは?」というわけです。

 

では、ここで、マンションの基本的構造である鉄筋コンクリート造(RC)の耐久性について確認しておきましょう。

 

鉄筋コンクリート造はその名前のとおり、コンクリート造の芯部分に鉄筋を使うことで、頑丈さとしなやかさを兼ね備えた、強度や耐久性の高い構造です。

 

鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年ですが、「適切な維持管理がなされていれば、実際の耐久性はそれよりもずっと長く、一般的に80年~100年はもつ」といわれることが多いように思います。

 

どのような理屈なのでしょうか。

 

鉄筋コンクリート造の耐用年数を決定づけるのは、そのものずばり、「鉄筋」と「コンクリート」と考えられています。

 

鉄筋が錆びて腐食してしまうと、建物の強度が失われていきます。「錆び」は金属の酸化還元反応ですから、鉄筋が空気や水に触れて酸化しないよう、アルカリ性のコンクリートで包んでいます。

 

一方で、コンクリートは、空気中の二酸化炭素と結合することにより、アルカリ性が失われ徐々に中性化していきます。そのスピードは「30年間に1センチずつ」といわれています。

 

そして、建築基準法では、鉄筋の周りにあるコンクリートの厚さを、最低でも3センチ以上取るよう規定されています。

 

つまり、鉄筋の周囲にあるコンクリートが中性化されて、鉄筋に酸化という害を及ぼすようになるまで、単純に30年×3センチ=90年かかる計算になるのです。

 

さらに、空気にさらされる建物の外壁は吹付材やタイルなどで覆われ、コンクリートがむき出しになっているわけではありません。メンテナンスや管理状態にも左右されますが、実際の中性化スピードは計算値よりも、緩やかなものになるでしょう。

 

また、コンクリートそのものの耐久性について参考となる「建築工事標準仕様書」というものがあります。この仕様書では、鉄筋コンクリート工事における大規模な補修が不要な期間と、それに応じたコンクリートの設計基準強度を段階に分けて定めています。

 

これによると、一般的な中古マンションで使われていることが多いといわれる強度24N/mm2のコンクリートでは、建物を使い続けるにあたり、“大規模な補修が不要な期間”が60年とされています(「建築工事標準仕様書・同解説JASS5鉄筋コンクリート工事」日本建築学会2015)。

 

現実に建物を維持管理していく中では、当然に定期的な修繕やメンテナンスを行っていくため、実際の耐用年数はこれよりも長いものになると推測できます。

 

「鉄筋コンクリート造の建物は、適切な管理さえ行われれば80年~100年もつ」という定説は、こういった建築材のデータから考えられているのでしょう。

 

それでは実際に、鉄筋コンクリート造でそんなに長く経っている建造物はあるのでしょうか。

「スケルトンリノベーション」でリターンがアップ

 リノベーションの「器」としての価値 

 

たとえば、商業施設として非常に有名な伊勢丹新宿本店(1933年竣工)は、鉄筋コンクリート造の著名な建造物の一例です。伊勢丹は、鉄筋コンクリートに加えて鉄骨を使用している構造ですが、築86年という長きにわたって耐久性を維持しています。建て替えるという話は出ていませんので、今後も改修を続けながら、日本を代表する百貨店として営業を続けると思われます。

 

住宅系では、築76年でまだ使用できたものの、建替えによる経済的メリットや、耐震基準改正前の建物、という安全性の問題によって解体された青山同潤会アパート(1927年竣工)があります。また、築60年以上経った現在でも健在の代官山コーポラス(1957年竣工)など、法定耐用年数を大きく超えて使われている実例が存在しています。

 

そもそも、日本におけるマンションの歴史はまだ浅く、先ほどの青山同潤会アパートあたりがその始まりといえます。その頃の建物の大半は、物理的にはまだまだ使用できるものの、主に耐震性の問題から建て替えが進んでいます。

 

現在の築20~30年の物件は、耐震基準が改正された後の「新耐震基準」の建物です。耐震性を理由とした建て替えの必要はありませんので、今後、こういった物件が築100年を超える事例となってくるのかもしれません。

 

つまり、マンションの築年数が経っていても、鉄筋コンクリート造の物理的な耐用年数は47年よりずっと長く見込めるため、スケルトンリノベーションする「器」としての価値が十分にあるということがいえるのです。むしろ、これほどの耐用年数を見込めるということは、働いてくれる期間もそれだけ長くなるということです。本格的なリノベーションを施すことで家賃を引き上げられる余地があるのなら、その潜在能力は早めに発揮させておくに越したことはないでしょう。

 

<POINT>

●RC造は、適切に管理されれば、一般的に80年~100年もつといわれる。

●RC造は、耐用年数を長く見込めるため、リノベーションに適している。

●早期にリノベーションを施すことで、トータルリターンを大きくできる。

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