「採用担当者の魅力」の項目だけが高いときは注意
前回の続きです。
また、共感しているポイントとしてよくあるのは「採用担当者への魅力」です。調査でもこの項目が高いのは非常に重要なことで、採用担当者の魅力が起点になって、社員や社長への魅力度も上がり、理念や戦略の項目も上がっていく傾向にあることが分かっています。採用担当者が起点になるのは、ある意味正しいこと。採用活動の中で、一番長く接点を持つからです。しかし、「採用担当者への魅力」の項目だけ高く、理念や戦略、仕事内容の項目が平均4点以下の場合は、注意が必要です。
「採用担当者に好感を覚えたから」「採用担当者と一緒に働きたいと思ったから」といった声は、採用担当者には嬉しい言葉です。しかし「質の高い母集団形成」を目指すには、好ましくない傾向なのです。
なぜなら、理念に共感してくれているのではなく、採用担当者に共感しているからです。多くの場合、採用担当者と一緒には働くことはできません。ミスマッチにつながってしまうでしょう。その時点でロイヤリティが急落してしまうのです。
「福利厚生」などの項目では、早期退職リスクを測れる
また、8〜10にある「福利厚生の充実度」「昇給・昇格」「研修体制」の魅力が高い場合も注意が必要です。ある企業で「研修体制の充実」を訴求ポイントとして掲げ、採用を行っていた企業がありましたが、数年経つと辞めてしまうという課題がありました。それを深掘りして分析してみると、どうやら辞めてしまう人たちは、そこでスキルを得ると、さらに体制が充実した場所へとステップアップしていくことが分かりました。
8〜10の項目はいわゆる企業にとってのスペックです。大きな企業ほど有利。小さな会社が採用市場で戦う場合、どれだけ自信があっても、訴求すべきポイントでないことが分かります。スペックで戦うのではなく、あくまで理念を真正面から訴えることが重要なのです。
なぜなら理念は比べられるものではありません。賛成できるか、できないか。もっと言えば、好きか嫌いかです。ということは、大企業でなくても、理念に共感してもらえれば、入社に至る確率も上げられます。そのため、理念への共感度をきちんと計測し、本来の意味における「質の高い母集団形成」を目指すことが肝要です。
これらの結果を採用コミュニケーションに応用すると、内定を出した時に、その人が理念、戦略、仕事内容に共感している状態をつくればいいことになります。そのためのガイドラインとして、先に示したMOSEALSモデルを利用し、コミュニケーションを組み立てることができるはずです。