理念を軸とした採用計画で、実行も改善もスムーズに
具体的にやるべきことが見えてきても、それだけでは十分ではありません。それぞれの施策を誰が実行するのかまで検討する必要があります。
例えば、一次面接や二次面接は誰が担当するのかということにはじまり、イベントの運営やツールの制作、キャッチコピーの作成まで、担当者を決めておきます。加えて、どこに外注するのかまで考えます。
採用ブランディングの全体像からやるべきことを決めておけば、スムーズに実行することが可能です。すべての施策において理念を踏まえたコンセプトという柱を掲げておけば、ブレてしまうこともありません。
どうしても施策の一貫性が保てないという場合には、理念そのものが弱いという可能性もあり得ます。あるいは、理念が当たり障りのないものとなっており、差別化できていないということもあるでしょう。
しかしそれは理念が不十分なのではなく、ほとんどの場合、その理念の意味やニュアンスまで掘り下げができていないことのほうが多いように思います。理念には創業時の想いが必ず含まれています。経営者に話を聞くなどして、理念に込められた意味を解き明かすことが、採用活動にも必ず活きてきます。
最終的に自社にしかないものを生み出すことができれば、それが採用ブランディングにおけるその会社の軸となるのです。
条件ではなく「企業理念」に惹かれる人材が集まる
突き詰めて考えれば、採用がうまくいかなくなった段階で、理念について改めて考えることが求められます。理念が活かされておらず、採用活動に浸透していないからこそうまくいかないという発想になるべきなのです。
例えば、理念を活かした採用ではなく、給与や福利厚生などの条件面で勝負しているのかもしれません。そのような場合、より応募者にとって望ましい給与や福利厚生を提供している企業とも競わなければなりません。
また、たとえ条件面で人を採用できたとしても、仕事の環境や内容、あるいはそこで働いている人が合わなければミスマッチにつながりかねません。第7回の調査結果で示した通り、条件重視で入社した場合、よりいい条件の企業があればそちらへ転職してしまう可能性も否定できません。
せっかく入社してくれた人材も退職してしまえば、教育にかけた時間や採用費などは無駄になってしまいます。だからこそ、給与や福利厚生などの条件面で勝負するのではなく、本質的な思考を基にした採用ブランディングに切り替える必要があります。
特に、新卒採用や中途採用に力を入れていきたいと考えている企業であれば、すぐに理念に基づくコンセプトづくりをはじめたほうがいいでしょう。ブランディングは早く着手したほうが高い効果を得られます。まだ採用シーズンまで余裕があるなどと考えていては、時間が足りなくなる恐れがあります。
魅力的な条件を提示できなくても、自社なりの理念をきちんとコンセプトに落とし込み、採用ブランディングをしっかりと実践する、そのうえでキラーコンテンツである経営者が前に出て伝えていく必要があります。
そういった活動が、採用環境を好転させることにつながるのです。