前回は、医療の現場に迫る「危機」とは何かを説明しました。今回は、高齢者の医療費がもたらす、「現役世代」の医療危機について考察します。

後期高齢者支援金のツケを、現役世代が払うことに!?

前回の続きです。

 

協会けんぽにしろ組合健保にしろ、後期高齢者医療制度への支援金に現役世代の保険料の一部を充てる仕組みになっていて、これが財政を圧迫しています。健保連の調べでは、後期高齢者支援金の総額は2008年度には1兆2220億円でしたが、2017年度には1兆8227億円に増える見込みです。

 

後期高齢者医療制度が創設されてからわずか9年間で5割を超える増加ぶりです。これから高齢化が本格化する中で、現役世代にこれ以上の負担を求めるのは厳しいと言わざるを得ません。

 

そこで政府は2017年度の予算編成で、「世代間の負担の公平性確保」をことさらに強調し、高齢者に新たな負担を求める方向で制度の見直しを決定しました。

 

ただし、近年では「老後破綻」がメディアで盛んに取り上げられており、高齢者に一律に負担を強いることにも限界があります。患者にこれ以上の負担を求めるのなら、一人ひとりの資産の保有状況に応じてどれだけ負担を求めるか判断するなど、より抜本的な見直しが必要です。

市区町村が運営する国保の財政悪化も、非常に深刻

市区町村が運営する国保の財政悪化もとても深刻です。国保の加入者には無職の人や収入が不安定な人も多く、財政運営が不安定になっています。 

 

そこで2015年には、2018年度に国保の財政運営を従来の市区町村から都道府県へ移管する医療保険制度改革の関連法が成立しました。財政基盤を都道府県に拡大して、少しでも安定運営につなげようというのです。

本連載は、2017年5月30日刊行の書籍『病院崩壊』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

病院崩壊

病院崩壊

吉田 静雄

幻冬舎メディアコンサルティング

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