民間病院の事業縮小・消滅で地域医療が崩壊!?
地域医療連携推進法人に参加することで事業の縮小を迫られるとすれば、役割分担の調整がますます困難になるのは間違いありません。中小規模の民間病院があえてスキームに参加すべき理由は少ないのです。
むしろ、「協調」よりも都道府県知事による命令のような強権的な手法が不可欠でしょう。
医療版HDの創設を提唱した人の中には、「統合によって民間病院が消滅するのもやむを得ない」といった強硬論を唱える人もいますが、地域医療に貢献しようと長年積み重ねてきた全国の病院経営者たちの努力を一切顧みないスタンスはあまりに乱暴で、逆に地域医療の崩壊につながりかねません。
医療提供体制の再編成が不可欠だとしても、患者と医療従事者の立場で考え、当事者の納得が得られるよう議論を進めてほしいものです。
病院をさらに追い詰める「消費税の引き上げ」
消費税率10%への引き上げが2回にわたって延期されましたが、延期を歓迎した人も多いかもしれません。
本来この「消費税」は不足する社会保障費を補うためのものですが、病院にとっても歓迎できないどころか、崩壊を助長する大きな要因になっています。
そもそも消費税率引き上げは、社会保障費を補う目的すら果たせない仕組みになっています。消費税を上げた分、法人税を減税するからです。これでは法人税減税のために消費税を上げるようなものです。
たとえば皆さんがスーパーマーケットなどの小売店で食料品や日用品を購入した際には税率に従って消費税も支払っています。一方、小売店はその分と仕入れに際し支払った消費税との差額を納税します。このように、現在の仕組みでは食料品や日用品の販売や飲食店のサービスの多くが「課税取引」とされ、最終消費者が消費税を負担します。
しかし、物やサービスの「消費」に対して負担を求める性格から、一部のサービスなどは「非課税取引」となります。社会保険医療の給付(美容医療などは除く)や介護保険サービスの提供がその一つです。
病院や診療所は、医薬品や医療機器を卸売業者から仕入れる際には消費税を支払っていますが、最終消費者である患者にその分を求めることはできません。
つまり、その分は基本的に病院や診療所が負担するしかないのです。