今回は、銀行の担保になった土地の「根抵当の解除」が困難な理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

含み損のある土地を売却し、総資産を縮小すべきだが…

前回の続きです。

 

「担保に頼らない融資をせよ!」
「過去に設定した担保も外しなさい!」
と、金融庁は銀行に指導しています。
しかし、実際には、
土地や建物を担保に差し出し、
抵当権を設定されている、
というケースが、まだまだ多いのです。

 

含み損のある土地は、別会社に売却して、
総資産を縮めなさい!
と申し上げています。

 

そのことを、オフバランス(総資産の圧縮)と言います。
“土地は銀行の担保に入っていますが、大丈夫でしょうか?”
との経営者の疑問には、
“売却で得たお金で、借入残金を返すなら、銀行はOKします。
 それを、「有償解除」と言います。”
とお伝えしています。

借り入れのない銀行にまで「根抵当」が残っている!?

ある会社で、
土地売却のオフバランスを進めていた時のことです。
まずは、売却する土地の、担保状況を確認してもらいました。
“6番まで、銀行の「根抵当」がついてました!”
先代の後継者から、連絡がありました。さらに、
“今はもう借り入れも取引もない銀行の「根抵当」が、
3件も残ってます!”と言うのです。

 

で、残りの3件は、何らかの形で借入や取引が残っている銀行でした。
とにかくまずは、借入残も取引きも何もない、
3件の銀行から、「根抵当」の解除手続きを進めることになりました。
オフバランスを進めるには、
「普通抵当」も「根抵当」も、すべて解除する必要があるのです。
単に手続きを進めるだけでも、労力がかかります。
もはや取引もなじみもない銀行支店に出向き、
「根抵当」解除の申し入れをし、必要書類をいただき、
捺印などを進めてゆきます。

 

当然、各銀行とも、
“改めて、ご融資などいかがでしょうか?”
などと言ってきます。
それだけでも、面倒くさかったのです。
と、このときはありませんでしたが、
もっと面倒くさいのは、
「根抵当」設定後に、銀行合併で名前が変わっていたり、
その支店がなくなっていた、という場合です。
その場合、
「根抵当権」が、新銀行に譲渡されているのかどうか、
から、問い合わせて行かねばなりません。
それさえ、“まずどこへ行けばいいんだ?”などとなります。
で、譲渡先の新銀行とのやり取りが必要になるのです。
地方銀行は今、再編が加速しています。
安易な「根抵当」設定は、
解除時の面倒を高め、より時間を要することに、なるのです。

 

で、またもや、その新銀行でも、
“これを機に、ご融資をいかがでしょうか?”
などと、言ってくるわけです。
先の会社では、残り3件の「根抵当」設定銀行で、
借入や、他の取引が継続していました。
この解除がまたまた、やっかいだったのです…。

 

(続)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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