含み損のある土地の売却を進めていた、ある会社
前回の続きです。
「担保に頼らない融資をせよ!」
「過去に設定した担保も外しなさい!」
と、金融庁は銀行に指導しています。
しかし、実際には、
土地や建物を担保に差し出し、
抵当権を設定されている、
というケースが、まだまだ多いのです。
ある会社で、含み損のある土地売却を、進めていました。
その土地には、なんと6銀行の根抵当がついていました。
そのうち、取引がない3銀行は、なんとか解除ができました。
残るは3銀行の解除でした。
うち2銀行は、借入残高がわずかでした。
残る1銀行を、仮にA銀行とします。
都道府県の名前がついた、地方銀行です。
A銀行の借入残高は、1億以上でした。
それでも、
土地を売却すれば、その資金で全額返せる額でした。
なので、何よりもまず、経営者はA銀行へ交渉に出向いたのです。
A銀行の支店長に、子会社への土地売却スキームを説明しました。
で、その土地を買うための、子会社への資金融資をお願いしました。
“なるほど!そのようなことなら、ぜひ、ご協力いたします。”
“ありがとうございます。
つきましては、この土地の根抵当を外していただき、
土地売却で子会社から得た資金で、
現状の借入残高を全額返済させていただこう、
と思っております。”
経営者は、要望を正直に伝えました。
少し間をおいて、支店長が言いました。
“ご要望は理解しました。
売却資金の融資に協力いたしましょう。”
“ありがとうございます!”
“ただし、こちらからもお願いがあります。”
“なんでしょうか?”
“他の2銀行にはお返しいただいて構わないのですが、
私共の借入は、返済せずに、
そのまま残していただけませんか?
で、根抵当も解除せずにそのままで、
ということで、どうでしょうか?”
資金融資はするが、うちの借入金は返さないでくれ…!?
要は、
資金融資はしてやるが、うちの借入金は返さないでくれ、
よその銀行の借入金は返してもいい、
根抵当はついたままで、売却もさせてやる、
というわけです。
“いやいや、それでは、子会社含めて借入総額が増えるし、
根抵当はそのままだし、
うちとしてはメリットがないですよ。”
経営者は言い返しました。
すると支店長も、笑顔で言い返してきました。
“そういうことですと、ちょっと、対応しかねますね・・・。
また改めて、全額返済いただいたタイミングでなら、
根抵当も解除させていただきますので。”
支店長はまさに、してやったり!といった思いだったと思います。
いかがでしょうか?
銀行にとって、根抵当権は、
交渉の主導権を得るための、切り札になるのです。
そんな切り札となる契約を、安易にしてはいけないのです。
この件に関しては、その地域でA銀行の格下のライバルである、
B銀行の支店長が、新たに協力してくれました。
“そういうことなら、ぜひ、協力させてください!”
で、B銀行の支店長は、A銀行の根抵当を外すべく、
大胆なスキームを教えてくれたのです・・・。
(続)