介護施設に「クリニック」「温浴施設」を併設
前回の続きです。
第二美杉小規模多機能型居宅介護施設の強みのひとつがクリニックを併設していることです。クリニックは週4日間開業し、地域の人たちの健康を守っています。これまで美杉町下之川地区には数年間診療所がなく、地域の高齢者は隣町の病院に行くほかありませんでした。しかし、地域にクリニックができたことで、高齢者は気軽に自分で診療を受けに行ったり、薬を受け取ったりすることができるようになりました。また小規模多機能型居宅介護施設には、だれもが気軽に入れる足湯のある温浴施設が併設されています。クリニックでの診察が終わった患者と小規模多機能型居宅介護施設の利用者が、一緒に足湯につかり、交流を深めている光景も見られます。
クリニックの院長は、元愛知県がんセンター研究所所長の田島和雄先生。ほかに看護師1名、レントゲン技師1名、事務員2名で構成され、近い将来にはリハビリ専門職も配属される予定です。かねてから地域医療を志していた先生の目標は「健康な高齢者ばかりの未病村づくり」。診療や健康診断はもちろん、合計10回のカリキュラムをつくり、月2回の「美杉ホットテラス健康講座」の講師や「ホットテラス通信」の健康コラム執筆などの形でも協力してもらっています。
また田島先生は、医師という立場から「地域力」を実践しています。
実際、先生は地域の人たちと深く触れ合うために、職員とともに地域の祭りに参加したり、健康講座の会場で参加者と学区の小中学校の校歌を歌ったり……と地域に深く根ざし、人との関係づくりに力を注いでいます。地域力の高いクリニックを中心として、地域と施設がつながることができたというわけです。
こうした取り組みや先生の気さくな人柄もあって、クリニックにはたくさんの患者が訪れるようになりました。今後は、地域の高齢者全員に健康診断を受けてもらう計画もあります。
人々との橋渡し役に「地元出身のパート職員」が活躍
施設は非常に充実していますが、小規模多機能型居宅介護施設の場合、さらに利用者の希望に沿うために柔軟な対応が求められます。
また、その地域の人だけが利用できる地域密着型のサービスという特性上、地域に根ざした活動は欠かせません。また、その地域のより多くの住民に利用してもらえる施設になるためには、「施設をより知ってもらうこと」つまりPR力が重要なのです。
そのために効果的なのは、自治会や老人クラブなどを介して、地域と積極的にかかわっていくことです。そこで大活躍したのが、地元出身のパートの職員でした。
地元採用の職員は、地域の高齢者や自治会長とも密接なパイプを持っています。その人脈を効果的に活用することで、難なく地域とのかかわりが実現できたのです。
実際に、地元出身のパート職員が、自治会や地域の人々との橋渡し役を買って出てくれたこともあり、施設として地域のお祭りなどにも参加することができるようになりました。その職員の力で、第二美杉小規模多機能型居宅介護施設は、より一層地域に密着した施設に育ったのです。これも、地域力のひとつだと感じます。
また、前述した田島先生は常に「どうすれば美杉の産業が発展するか」を考えています。魅力あるこのエリアに企業の目を向けさせるためには何をすればいいか―私たちも同様にこうしたテーマについて考え、美杉の人口を回復し、地域発展につなげることが、これからの大きな目標です。
第二美杉小規模多機能型居宅介護施設と美杉クリニックの通称は、「美杉ホットテラス」といいます。この名前には、地域を照らすあたたかな灯り、という意味が込められています。どんな地域においても、医療施設・介護施設・職員が「地域力」をつければ、福祉が本当の意味で地域に根ざすことができるのです。美杉ホットテラスがこれからも美杉を明るく照らす、シンボリックな存在になれるよう、職員一丸となって「地域力」を高めていきます。