コミュニケーションがなければ「介護」は成り立たない
介護職員と利用者のコミュニケーションが、介護の基本です。利用者は何が好きで何が嫌いか、どんな人生を歩んできた人なのかなど、その人を理解することで、利用者の満足を高めることができます。
介護は、介護職員が「してあげる」ものではありません。利用者は一方的に「介護される」のではなく、身体の方向を変えたり口を開けたりと、介護職員の動きに「協力」してくれています。つまり、介護職員と利用者は同じ目的を果たすための「パートナー」といえるのです。
たとえば、介護をする際に利用者にしてもらう動作を分かりやすく伝えることで、利用者の動きがスムーズになることがあります。また、利用者が理解し自分で少し動くことで「それまでできなかったことができた」という成功体験は利用者本人の自信につながり、次もやってみよう、というモチベーションにつながります。
介護は人と人が向き合う仕事です。できることは利用者に行ってもらいながら少しずつ利用者ができることを増やしていく。こうした理想の介護は、利用者と介護職員の深い信頼関係があってこそできることで、信頼関係を築くためにはコミュニケーションが大切なのです。
介護職員と利用者が日頃から声をかけ合うことで、介護職員は利用者の気持ちに寄り添い、利用者は介護職員に心を開くことができます。
介護にともなう声かけはもちろん、他愛ない会話をしたり日常生活の中での声かけで利用者は「気にかけられている」と感じることができ、それが介護への満足感につながります。
相手のことを理解する姿勢がトラブル回避につながる
非常に残念なことに、介護職員による利用者への虐待がたびたび問題になりますが、これは言語道断。あるまじき行為です。また逆に、介護職員がプロに徹して仕事をしていても、利用者からセクハラや暴力行為を受ける場合もあり、やりきれなさを抱えることもあります。当然ながら、利用者にも個性があり、さまざまな性格の人がいます。こちらが丁寧に介護をしてもその気持ちが伝わらない場合もありますし、そもそも、どうしても「馬が合わない」という場合もあります。
しかしこうしたトラブルが起きてしまうのには、必ず理由があります。利用者の中には「もっと自分を理解してほしい」「嫌なことをさせないでほしい」「自分のペースに合わせてほしい」などの気持ちをうまく表現することができない人もいます。今まで当然のように自分でできていたことがうまくできず、「こんなこともできないのか」と自分をもどかしく感じ、それが行動となってあらわれている場合も多いのです。
そういう場合、利用者と頻繁に会話し、コミュニケーションをとることでその気持ちを理解できれば、介護職員もどのように接すればよいか見当がつくようになり、トラブルを回避することができます。
ほかにも、利用者の家族からのクレームに追いつめられる場合もありますが、その場合も、コミュニケーションを第一に、家族とよく話し合い、思いや希望を理解するよう努めることが大事です。利用者の家族とも、日頃から世間話も含めてよく話すことで、何かあったときにすぐ相談を受けることができ、事前にトラブルの芽を摘み取ることができるようになるのです。