3業態を請け負うため、職員の負担は大きいが・・・
事例:美杉小規模多機能型居宅介護施設
地域力を高める
●医療と介護の連携で、地域の人々の「安心」を育てる
●地域の活動に積極的に参加する
●健康情報の発信を続ける
一般的に「小規模多機能型居宅介護サービス」は、通い・訪問・宿泊の3つの業態をすべて同じ事業所の介護職員が行うため、職員の負担はかなり大きくなります。各市町村では、まだ積極的な運営がされているとはいえないのが現状ですが、私たちの法人では力を入れて取り組み、「地域密着」の福祉サービスを実現しています。
三重県津市の美杉町は、山々に囲まれ、サルやシカを日常的に見ることができる自然豊かなエリアです。2016年現在、およそ2600世帯、人口は4671人で、1985年をピークに年々減少を続けており、現在は人口の57%が65歳以上という、高齢化が著しく進んだ地域です。
この美杉町には、「美杉小規模多機能型居宅介護施設」と、「美杉クリニック」を併設した「第二美杉小規模多機能型居宅介護施設」の2つの小規模多機能型居宅介護施設があります。高齢者福祉施設のイメージとは離れて、地域の景観に溶け込みながらも特別感を演出したデザインにしました。
急な「泊まり」の要望も、当日まで受けつけ対応
小規模多機能型居宅介護は、ケアマネジャーが基本のケアプランをつくる点ではほかの施設と同様ですが、そのケアプランをベースに突発的な状況に臨機応変に対応することが求められます。たとえば「出張、冠婚葬祭で留守にするので」「家族が風邪をひいて介護ができない」といった理由はもちろん、「泊まりたい」といった気軽な要望にも、当日まで受けつけています。同様に、いつもは「泊まり」を中心に利用しているが、「今日は日中、自宅で過ごしたい」「服薬の確認だけをしに来てほしい」「昼食の時間だけはセンターで過ごしたい」という希望にも柔軟に対応ができるのが小規模多機能型居宅介護の魅力です。
現在、「美杉小規模多機能型居宅介護施設」では「登録定員」が25名、「通い」が15名、「泊まり」が5名、「第二美杉小規模多機能型居宅介護施設」では「登録定員」が18名、「通い」が12名、「泊まり」が6名。それぞれの利用者が自分自身の希望に沿って柔軟に多様な介護サービスを受けています。
小規模多機能型居宅介護の運営には地域とのつながりが必要不可欠です。美杉町というコミュニティのなかで、地域住民とのつながりを強固にし、小規模多機能型居宅介護という特殊なしくみを地域の人にもっと知ってもらう必要があります。そこで、地域とのつながりを「地域力」と定義し、この地域力を高める取り組みを施設全体で行いました。