それぞれの生活リズムに合わせた介助で満足度アップ
介護するうえで重要なのは、移動・移乗介助、食事の介助など実践的なテクニックですが、さらに利用者のことを理解し、一人ひとりに合わせた動きをとることがとても大切です。
介護は利用者のできない動作を適切に介助し、自立を支援するためのものです。そのためには、利用者それぞれのタイミングに合わせた介助を行うことが基本になります。
排泄のタイミングや動作、食事の好き嫌い、入浴にかける時間などは人によって異なります。その人に合わせた介助をしなければ、利用者の支えになることはできません。
もちろん、各施設で決まったタイムスケジュールがあるので、利用者全員の希望を叶えることは困難です。しかしたとえば、「Aさんは食後にトイレに行くことが多く、Bさんは食前が多い」「Cさんはお風呂をさっとすませたいけれど、Dさんはゆっくりと入浴したい」などそれぞれの小さな生活リズムの違いを認識し、そのリズムに合わせるだけでも利用者の満足度は大きく変わります。
まずは利用者一人ひとりのタイミングを観察し、普段の生活リズムについて利用者やその家族と話し合う必要があります。日常の観察だけでなく家庭で暮らしていた時の生活習慣を知ることも、とても大切です。
さらに、利用者本人に時間を意識してもらい、生活リズムを整えることも大切です。そのために、「7時ですよ、起きる時間ですね」「もうすぐ12時ですからお昼ごはんです」「9時近くなりました。お休みの準備をされますか」日々の介助から在宅まで――利用者・家族の満足度を高める介護サービスとは2 第章など、動作を促す声かけの中に時間を組み込むことが効果的です。これを毎日繰り返すことで、少しずつ時間を意識して生活できるようになります。
利用者の「日々の体調」を見極めた介護が必要
また、利用者にはそれぞれ体調の波があり、加齢による不調――難聴、認知機能の低下などがあらわれます。日々の体調を把握し、それに合わせた介護をしなければ利用者の負担になるうえ、事故につながることもあります。
こちらが普通に話しているつもりでも、利用者に伝わっていないと感じたら、何らかの不調を疑ってください。
たとえば難聴の場合は、声を大きくしたりゆっくり話したりすることで聞き取れる場合もあります。どれくらいの早さで、どの程度の語数までなら理解できるかを日々の会話から、把握するようにします。
こうした年齢による不調のほかにも、同じことをしていてもうまくいく日といかない日があるという体調の波や心理面の波もあります。
「週のはじめは調子がいい」「家族が来ない日は調子が悪い」など、体調や気分に一定の規則性があれば、それを知ることで、利用者のことをより理解しやすくなります。たとえ規則性がない場合でも「体調の波があるから動作がうまくいかないこともある。今日は体調が悪いのかもしれない」ということが理解できれば、介護の方法も変わってきます。