前回は、利用者とのトラブルを回避する「ヘルパーステーション」の活用について取り上げました。今回は、通い、宿泊、訪問のサービスを組み合わせて提供する「小規模多機能型居宅介護」の活用法を見ていきます。

2006年にスタートした「小規模多機能型居宅介護」

小規模多機能型居宅介護は、2006年にスタートした新しい介護サービスです。要支援1から要介護5まで、幅広い利用者が住みなれた地域で自立した生活ができることを目指し、施設への「通い」、短期間の「宿泊」、自宅への「訪問」といったサービスを組み合わせて提供しています。つまり、通所介護を中心に、ショートステイとホームヘルパーの3つを組み合わせたようなものと考えることができます。それぞれの回数もケアマネジャーと自由に調整できるため、利用者のさまざまなニーズに柔軟に対応できます。また、生活困窮者や介護虐待がみられる場合のシェルター的な役割を果たすことも可能です。

 

[図表]小規模多機能型居宅介護

 

通常の訪問介護や通所介護などよりも時間の規定が厳格でないため、利用者の希望に応じて柔軟に対応ができます。たとえば、定期的な安否確認、服薬介助だけの短時間の訪問、体調不良による突発的な訪問、入浴・食事の時間のみの通いなど必要なサービスのみを短い時間だけ提供できるのです。急な受け入れや、突発的な要望にも対応しなければならないため、職員間の連携や協力体制が必要となります。

 

また「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスは、同じ施設の職員が利用者のニーズに合わせて対応します。その分、介護職員は幅広い知識が必要となりますが、現場で経験を積みながら、自然と身につけていくことができます。

利用者の「リアルタイムな情報」を職員同士で共有

住み慣れた地域での暮らしを希望する利用者にとって、必要なのは「地域密着型」の支援です。多くの人にこのサービスを知ってもらい、利用してもらうこと、さらに利用者一人ひとりに寄り添ったサービスを提供することで、安心・安全な生活や人間関係、生きがいを提供することにつながります。

 

そのためには、職員一人ひとりが利用者の生活歴を知り、急な要望にも応えられるようにしなければなりません。また情報の共有、職員の連携も必要になってきます。

 

私の法人の小規模多機能型居宅介護施設では、朝礼・夕礼、業務日誌、連絡ノート、ケースファイルなどを活用して、常に最新の情報を共有・確認できるように努めています。緊急時には職員連絡網を活用し、職員同士が率先して連絡をとり合い対応しています。

 

在宅で暮らす高齢者の生活は毎日変化します。そのため利用者の状態を把握することは、在宅での生活を維持する上で必要不可欠です。利用者のリアルタイムな情報を職員同士で共有することが、柔軟な小規模多機能型居宅介護サービスを提供する上で重要になります。

本連載は、2017年8月26日刊行の書籍『利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル』から抜粋したものです。

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

利用者満足度100%を実現する 介護サービス実践マニュアル

山田 俊郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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