今回は、プロフェッショナルとしての株式投資において重要な、守備範囲を「絞り込む」発想について見ていきます。※本連載は、投資顧問会社「林投資研究所」代表取締役の林知之氏の著書、『プロの視点 うねり取り株式投資法 基本と実践』(マイルストーンズ)の中から一部を抜粋し、個人投資家のための「うねり取り」実践のポイントを紹介します。

浮ついた変化は否定し、感情の揺れを最小限に抑制

「どの銘柄がいいの?」という質問は、多くの場面で登場する。

 

単に安っぽい“銘柄発掘”のイメージもあるが、「いろいろな銘柄を手がけたい」という自然な欲求が誰にでもあると思う。

 

いつも同じ服を着て、同じ時間の電車に乗る・・・こんな行動パターンを是とする人もいるが、変化をつけることに楽しみがあるのだし、なによりも「変化がなければいけない」といった観念が根強い。

 

だが、プロフェッショナルな仕事をするのなら、浮ついた変化は否定しなければならない。必要な変化に抵抗を感じてはいけないが、基本的には守備範囲を“絞り込む”発想を大切にしたいのだ。

 

商店街の魚屋は、来る日も来る日も魚を仕入れて売っているから、プロとしての技術を維持し、その価値を認める人が魚を買いに来るのだ。といって、白バイ隊員が休日に自分のオートバイでツーリングに出かけるみたいな“熱狂”が必要ということではない。

 

むしろ、冷めた感覚で、淡々と売り買いする姿が望ましいのではないか。株価変動には、日常生活にない激しさがあるからだ。

 

その一部分しか取れないのが現実とはいえ、過去のチャートを見ても、今現在の値動きを観察しても、必要以上に気持ちが高ぶるものだ。そんな中に身を置きながら、自らの感情の振れは最小限に抑えたいのである。

個人投資家に与えられた「休む権利」をフル活用

さて、守備範囲を絞るとは、どういうことか。単純に考えてほしい。「やり方」を絞るのがひとつ、もうひとつは「銘柄」を絞ることだ。

 

やり方を絞るのは、「魚屋」を続けるということだ。いろいろな種類の魚を扱うが、市場で仕入れて主婦に小売りする、これに徹するということ。

 

銘柄を絞るのは、強いていえば「マグロ」だけを扱うことだろうか。切り身を小売りしたり、飲食店に卸したりと幅広く活動するが、何があってもマグロだけ、ということ。

 

常に広い範囲を見ていないと不安だというのが、多くの人の心理だろう。だが、キョロキョロと銘柄探しをして、自らドツボにはまる人が大勢いるのだ。そういう参加者の手によって生まれた価格変動を利用して儲けようとするのだから、どっしりと落ち着いていたい。

 

上げ相場と読んでジッと買いポジションを持っていたが、伸びなくなったので短期売買に切りかえる・・・こういう器用なことをやろうとしても、みな失敗する。数カ月ごとに職業をかえて、ちゃんとした仕事ができるだろうか。

 

では、どうするか──。自分のやり方で取れなくなったら、休むのである。個人投資家に与えられた最大の武器、“休む権利”をフル活用すればいい。

 

毎月の成績を求められる契約ディーラーではないのだから、年に数回のチャンスで着実に取るようにすればいい。難しい値動きに挑む必要もないし、個人的な都合で売買を控えてもいいのだ。

 

1年間休んで「来年頑張ろう」という態度だって許されるのだから、ムリして大きな損をするよりは、利益の可能性を捨ててでも、ブレを生じない状態で傍観しているほうが先々の利益につながる。

 

こうした自由がある分、売り買いの行動そのものはストイックにしよう。ガマンするのではなく、「それが美しい」くらいのイメージで納得して道を選びたい。

 

繰り返すが、マーケット参加者の多くが「価格を動かす」側だと考え、「価格変動を利用する」側に立つためには、絞り込むことによる落ち着いた姿勢、プロフェッショナルな取り組み方で、「慣れ」による有利さを享受したい。

 

うねり取りは、やり方を絞るうえに、銘柄も絞る。極端な場合は、たった1銘柄を見ていればいい。

 

多くの人が「価格を動かす」役割を演じ、少しずつ消えていく。そこで生き残れば勝ち組、年に1回、小幅の利益を得るだけでもトップクラスの仲間入りなのだ。

プロの視点 うねり取り株式投資法 基本と実践

プロの視点 うねり取り株式投資法 基本と実践

林 知之

マイルストーンズ合資会社

価格の自律的な動き、つまり自然に発生する変動を利用して利益を上げる「うねり取り」は、数多くのプロ相場師が好んで利用している。この「うねり取り」による売買法を基本から実践まで、幅広く、丁寧にわかりやすく解説したの…

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