今回は、うねり取り株式投資法における「手仕舞い」の心得について説明します。※本連載は、投資顧問会社「林投資研究所」代表取締役の林知之氏の著書、『プロの視点 うねり取り株式投資法 基本と実践』(マイルストーンズ)の中から一部を抜粋し、個人投資家のための「うねり取り」実践のポイントを紹介します。

「手仕舞い」と決断した後は、素早い行動を

単発の練習以外は分割による仕掛けが大原則だが、手仕舞いは一括、あるいは回数の少ない分割が望ましい。わりとアッサリと手を引く、ということだ。

 

損小利大の「利大」のために、うまく波に乗れたら、一定のねばりを実行したい。良いポジションが、良い方向に動いているうちは、利を伸ばすためにも慌てて手仕舞いしたくない。だが、手仕舞い時期だと決断したあとは、素早く行動すべきだ。前項と同じように「瞬発力」をテーマに考えてもいいが、別の意味もある。

 

仕掛けるときは、その銘柄の、そのときの動きに「かかわりが浅い」状態だが、手仕舞うときには「深くかかわっている」状態だ。

 

そして、利食いでも損切りでも、“ニュートラル”な現金ポジションに戻るための単なる撤退だから、スパッと決断して潔く区切りをつけたい。これが、基本となるイメージである。

迷った結果の「半分だけ手仕舞い」はサイアク⁉

一般投資家と株のセンセイが繰り広げる質疑応答でありがちなのは、「持ち株が上昇しましたが、利食いのタイミングに迷っています」という質問に対して、「半分だけ売っておきましょう」とか「3分の1を残して利益を確保しましょう」なんて答えているものだ。

 

センセイのアドバイスを聞いた質問者は、「なるほど!」と納得するのだが、サイアクの問答としか思えない。

 

たしかに手仕舞いは難しい。前項で述べた通りだ。だからといって、グズグズとした態度で他人の意見を聞く、それも、トレードのエントリー前に相談するならいいが、最後の仕上げの段階で突然、他人の意見を入れようとするなんて……ちゃんとした“先生”の最高に的確な答えは、「いまごろ聞くな。自分で考えなさい」だろう。

 

上記の問答は、ただ感情にまかせて先送りしたい投資家がいて、実は手仕舞いするべきだと考えている状況だと理解したセンセイが、“半先送り”を提案しただけのこと。ある意味、とても優しいセンセイだが、感心はできない。実践者の間では、「無策なイモ筋」と呼ばれる対応である。

 

つけ加えておくが、最初からそういうポジション操作の有効性を確認して戦略を立てているのなら問題はない。迷った結果として半分だけ手仕舞いという部分が、ツッコミどころなのである。

 

トレード全体を計画的に進めていかないと、たとえ立派なオトナであっても「誰か先行きを教えてくれ!」というように思考停止の他力本願に陥りやすい。行き当たりばったりだけは避けなければいけないし、1回でもやってしまうと2回、3回とやってクセになるから要注意だ。

 

実際、かなり多くの個人投資家が、区切りをつけることができずに塩漬け株を抱えている。

 

「片づけなくっちゃ」と思いながら、暗い気分の毎日を過ごしているのだ。こんな出口のない迷路に迷い込まないように、引き際を明確にしてからポジションを取るべきだ。

 

たまにダラダラと酒を飲んで朝帰りをするくらいなら笑えるが、トレードで同じことをやらかすと悲劇である。飲み始めたら止まらない、そんなバカな酔っ払いは痛い目に遭うしかない。

プロの視点 うねり取り株式投資法 基本と実践

プロの視点 うねり取り株式投資法 基本と実践

林 知之

マイルストーンズ合資会社

価格の自律的な動き、つまり自然に発生する変動を利用して利益を上げる「うねり取り」は、数多くのプロ相場師が好んで利用している。この「うねり取り」による売買法を基本から実践まで、幅広く、丁寧にわかりやすく解説したの…

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