前回は、なぜ企業経営では「経理」と「財務」を分離させるべきなのかを取り上げました。今回は、財務と経理を統括する「CFO」導入のメリットを見ていきます。

「金利の引き下げ」などを期待するのであれば・・・

もし、会社が順調に成長を続け、さらに上のステージを、例えば株式の上場も目指すような段階に至った場合には、是非、CFOの導入も検討してみてください。

 

CFOは、Chief Financial Officerの略称で、日本では一般に「最高財務責任者」と呼ばれています。財務面と経理面を統括する責任者であり、アメリカ由来の職制ですが、日本でも最近、導入する動きが活発化しています。

 

ある推計によれば、2015年3月決算時点で「CFO」または「最高財務責任者」の肩書きを持つ役員がいる日本の上場企業の数は286社になります(伊藤雅彦「人材育成・紹介のプロが教えるCFO「人材」の考え方」〈『企業会計』2016年12月号〉より)。

 

CFOは、前述した経理部長や財務部長よりも広い視点から、企業価値を向上させることを目的として財務戦略を立案し実行していきます。

 

具体的には、今後の投資に必要な資本を調達するために新しい株主を見つけてきたり、一部の事業や資産を売却したり、規模のメリットを追求するためにM&Aを手がけたり・・・など。このように、CFOの働きは多岐にわたりますが、おそらくそのメリットを最もイメージしやすいものは資本コスト低減に向けた取り組みでしょう。資本コストとは企業の資金調達に伴うコストのことで、具体的には借入に対する利息の支払いや、株式に対する配当の支払いなどが挙げられます。

 

優れた手腕を備えたCFOであれば、銀行と巧みに交渉し、金利を1%下げさせることも可能です。仮に20億円の借金があるとすれば、支払う利子の金額が2000万円も減ることになる──そう考えてみると、CFOが会社に対してもたらす利益の大きさを実感できるのではないでしょうか。

外部から「プロの人材」を調達するのも手

このようにCFOが企業にとって有益な役割を担うことは疑いがありません。ただ実際問題としては、経理部長や財務部長ですら「満足できる人材が見つからない」「コストがかかり過ぎる」などの理由で雇えずにいる中小企業も少なくないでしょう。

 

そこで、「経理部長、財務部長がいないのは不安だ」というのであれば、経理、財務の専門家を外部から調達すること、すなわち「アウトソーシング」を検討してみてはいかがでしょうか。

 

アウトソーシングという言葉に対しては「誰にでもできる仕事を安く外注する」というイメージがあるかもしれません。しかし、そうした下請け的な作業を行わせるだけではなく、近時は専門的な知識とノウハウを持った”プロの人材”を社外に求める手段としても広く活用されています。

 

ことに人手不足が深刻化し社内で人材を育てることが難しくなっている昨今の環境下で、ハイスキルが要求される専門的業務を外部のプロに積極的に任せる傾向は強まっているように思われます(例えば、CFOに関しては、社外CFOという形で社外に人材を求めるのが当たり前になっています)。

 

社内で人を育てるのには教育コストもかかりますし、社会保障費も負担しなければなりません。さらに、育てた人材が辞めた場合の引き継ぎリスクも存在します。こうした弊害を考えると、提供されるサービスのクオリティが高くコストとベネフィットのバランスが十分に取れているといえるのであれば、社内に人材を求めるよりもアウトソーシングのほうが、経理・財務業務の効率化を図る観点からは、むしろ合理的な選択とみなすこともできるでしょう。

忙しい社長を救う 経理改革の教科書

忙しい社長を救う 経理改革の教科書

李 日生,普川 真如

幻冬舎メディアコンサルティング

公認会計士として大手監査法人に勤め、国内外の多数の大企業の監査業務を担当してきた著者たち。経理・会計の専門家としての立場から中小企業の経営をサポートし続けてきました。こうした経験の中で、中小企業は経理部を社内に…

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