前回は、経営者が意識すべき「会社の数字」について取り上げました。今回は、経営トラブルや経理ミスなどの隠れた問題を発見する、会社の数字の読み取り方を見ていきます。

水道代のチェックで「誤った上乗せ」が発覚

マクロやミクロの「会社の数字」に注目し続けることによって、経営上のトラブルや経理ミスなどの〝隠れていた問題〟を発見するきっかけをつかむことも可能となるでしょう。

 

実際のケースで具体的に説明すると──日本全国で飲食店チェーンを展開している甲社では、全店舗の水道光熱費を月次で細かくチェックしていました。1店舗で水道費を1万円減らせた場合、100店舗、200店舗あれば月次で数百万円、年間で数千万円の違いが出てきます。そうしたコスト削減効果を重視して、水道等を使い過ぎているような店舗に対しては本部がこまめに指導を行っていました。

 

ある時、都内の大型ビルで営業している某店の毎月の水道費がほかのチェーン店に比べて突出して大きくなっていることに気づいたので、本部が詳しく原因を調べてみたところ、水道局のミスで、同じビルの別の飲食店の使った水道費が誤って加算されていたことが分かりました(水道メーターの分岐になんらかの問題があったようです)。

イレギュラーな数字で「問題」を察知

このように、会計データを細かくチェックする作業を続けることによって、イレギュラーな数字が存在した場合には、「何かおかしい」と問題を察知し、その発見・解決に結びつけることが期待できるのです。

 

とりわけ、経理・会計に関わるエラーやミスは放置していればがん細胞のように、確実に会社の内部を蝕んでいき、気づいたら突然、わずかばかりの余命を告げられるような状況に陥っていたとしても不思議ではありません。近時、大きな話題となっている東芝の不正会計や巨額損失問題は、まさにその典型例ということができるでしょう。

 

そうした最悪の事態を招かないためにも、「会社の数字」を絶えず気にかけ、問題があれば速やかに改善に取り組む心構えが中小企業の経営者には必要となるのです。

忙しい社長を救う 経理改革の教科書

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李 日生,普川 真如

幻冬舎メディアコンサルティング

公認会計士として大手監査法人に勤め、国内外の多数の大企業の監査業務を担当してきた著者たち。経理・会計の専門家としての立場から中小企業の経営をサポートし続けてきました。こうした経験の中で、中小企業は経理部を社内に…

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