前回は、中小企業の経理部長にとっても欠かせない「複式簿記」の知識を取り上げました。今回は、企業経営で「経理」と「財務」を分離させるべき理由を見ていきます。

そもそもの役割が異なる「経理」と「財務」

経営者の経営戦略を財務面からサポートする組織として、経理部とは別に財務部を設けることも望ましいといえるでしょう。

 

どちらもお金を取り扱う部門であるため混同されがちですが、経理と財務はそもそもの役割が異なっています。

 

経理は、簿記の手法を用いて会社の現在の経営状況を継続的に記録することが主たる仕事になります。一方、財務は会社の資金を調達・管理し、財務戦略を立案し実行することが中心的な仕事になります。

 

つまり、経理は「会社の過去をまとめていく仕事」であるのに対して、財務は「会社の未来をつくり上げていく仕事」といえるでしょう。

経理と財務を一人に任せると、不正の危険が・・・

こうした経理・財務の違いに対応して、それぞれの責任者である経理部長と財務部長に期待される働きも次のように異なっています。

 

①経理部長

管理部門としての経理業務を統括し、会計数値を使って会社をガラス張りにする。

 

②財務部長

財務に影響を及ぼす金融市場等の外部環境や経営状況等の内部環境に関する情報を収集し分析する。

 

この両者の作業を同一の人間に行わせていると不正が起こる危険性が高まることから、内部統制の観点からも経理と財務は明確に分けるのが鉄則と考えられています。

 

また、前述のとおり、財務部長は会社の将来計画とリンクする財務戦略を立案する立場にあることから、経営メンバーの一員として組織化することが適切といえるでしょう。

忙しい社長を救う 経理改革の教科書

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李 日生,普川 真如

幻冬舎メディアコンサルティング

公認会計士として大手監査法人に勤め、国内外の多数の大企業の監査業務を担当してきた著者たち。経理・会計の専門家としての立場から中小企業の経営をサポートし続けてきました。こうした経験の中で、中小企業は経理部を社内に…

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