今回は、東芝問題を例に、銀行が企業の「格付け」を下げる真意を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

メイン4行以外の地銀も東芝を「格下げ」に…

東芝と銀行団の交渉を見ていると、
交渉というよりはむしろ、
東芝はもはや銀行管理の下に陥っている、といった様子です。
では、会社が銀行管理になると、
どのようなことが起こるのでしょうか?
その地獄を見た経営者の実話をもとに、書かせていただきます。

 

融資継続か否か、このところ、
東芝VS銀行団のバトルが過熱しています。
4月に入り、進展があったので、
改めてこのシリーズを書かせていただきます。

 

銀行団のメイン4行のうち、
みずほだけが2月下旬、
東芝の格付けを「要注意先」として下げました。
みずほは東芝への融資を切る覚悟で臨んだ、と申し上げました。
他の3行にすれば、みずほが裏切った形ですが、
その反面、自分たちも「要注意先」に下げやすくなりました。
どことも、一番手にはなりたくないものの、
そのあとには続きたいのです。
ただ、「要注意先」にすれば、融資額の5%を、
貸し倒れ引当金として損金計上しなければなりません。
そこに躊躇があったのです。

 

ところが、
4月に入り、他のメイン3行がすべて、
東芝の格付けを、「要注意先」に下げました。
これはどういうことでしょうか?
おそらく、年度末の3月末を超えたところで、
「要注意先」に下げよう、という思惑だったと思われます。
年度末を向かえる段階で「要注意先」にして、
貸し倒れ引当金の損金計上することを、避けたのでしょう。

 

メイン4行が「要注意先」なら、
メイン以外の地銀約80行も、当然、
東芝の格付けを「要注意先」か、それ以下にするでしょう。
地銀の銀行団離れは、ますます進行しているようです。
つまり、これ以上の融資はできない、
と決断した地銀が増えてきているのです。
その撤退分のカバーは、残った銀行団ですることになります。
各銀行の融資額という荷は、ますます重くなります。

格付けが下がるほど、銀行は金利を高くしたがる

東芝の自己資本は今、債務超過です。
それで「要注意先」というだけでも、優遇されています。
その下の格付けは、「要管理先」です。
この格付けになれば、銀行は、
約15%の、貸し倒れ引当金計上が必要となります。
「要注意先」の時に比べて、3倍の引当金計上です。
今のところ、銀行団は、融資を継続する姿勢、ということです。

 

しかし、
決算書に監査法人のお墨付きが出ていない現状、
銀行団は、「局面が変わった」と述べています。
これは何を意味するでしょうか。
融資継続の姿勢が撤回される可能性は、大いにある、
ということです。
銀行は、手のひらを返すもの、なのです。

 

中小企業も、決算書によって、
格付け(スコアリング)されています。
格付けが下がるほど、銀行は金利を高くしたがります。
それは、
貸し倒れ引当金の損金計上分を、取り戻しておきたい、
という意味でもあるのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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