今回は、銀行管理下に置かれてしまった企業の事例を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

常態化していた、銀行からの資金調達だったが…

その会社は、
メガバンク1行、地方銀行1行、地域信金1行、
の3行から融資を受けていました。
金額が多いのは、地域の信金でした。
売上回収期間が長く、設備投資もあることから、
銀行からの資金調達は常態化していました。
それでも、好況時は、返済原資をねん出できていました。
銀行との付き合い方は、なれ合いのようになっており、
経営者は、その状況がずっと続くと思っていたのです。
銀行にとっても、厳しい交渉など迫ってこないこの会社は、
それなりにうま味のある得意先だったのです。

 

ところが、
政権交代などにより、経営環境が一気に変わりました。
売上高が2割、3割と、瞬く間に減ってゆきました。
売上げが減れば、返済原資の確保は厳しくなります。
当たり前です。
しかしその時点でさえ、
経営者たちは、事の重大さに気づいていなかったのです。

“経営支援アドバイザーが今後のお手伝いをします”

ある日、銀行が態度を変える日がやってきました。
信金の支店長がやってきました。
“御社の決算状況をもとに、財務診断報告書を作成しました。”
と言い、いつになく淡々と、
財務診断報告書の説明をしていったそうです。
“この状況では、リスケをしていただくことになります。
 今後の事は、改めて連絡いたします。”
正直、経営者は、リスケがどういうものなのか、
よく知りませんでした。

 

いわゆる、リスケジュールです。
現状の返済額では資金繰りがたたないとき、
返済残高をもとに、返済期間や条件等を組みなおします。
それにより、銀行は、貸し先会社を経営破たんさせることなく、
融資額の全額回収を見込むわけです。
つまり、その信金は、
このまま倒産して不良債権になったら困る、
ということで、債権回収をソフトランディングさせるべく、
動き出したのです。

 

これまでのなれ合いのような関係は消え去り、
銀行側は極めて事務的な態度に豹変したのです。
支店長の言う通り、改めて連絡が入りました。
“経営支援アドバイザーが、今後のお手伝いをします。”
“わかりました。よろしくお願いいたします。”
お手伝いします、とはいうものの、
このときが、銀行管理に陥った瞬間だったのです。
それはまさに、地獄の一丁目への、入り口だったのです・・・。
 

(続)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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