今回は、東芝問題から、企業が資金繰りを最優先させる危険性について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

資金繰りに追われると、条件交渉どころではなくなる

融資継続か否か、このところ、
東芝VS銀行団のバトルが過熱しています。
4月に入り、進展があったので、
改めてこのシリーズを書かせていただきます。

 

銀行団の融資が継続しなければ、
東芝は上場廃止どころか、経営破たんに陥ります。
そのような状況において、経営実務の現場はおそらく、
今月の支払いや返済を、乗り切れるかどうか、
ということばかりが、頭にあることでしょう。
おそらく日々、資金繰りに追われているのです。

 

そうなると、
何をするにしても、資金繰り対策が優先します。
役員報酬、賞与、給与、手当をカットする。
徹底的なコストダウンを、現場に要求する。
稼いでいる事業を売却する。
不動産や有価証券を売却する。
すべては資金繰りのためであり、
銀行対策のため、となってしまうのです。
いわば、銀行団の言いなり状態です。
そのような思考回路に、陥ってしまうのです。

 

このような事態になると、銀行交渉といっても、
借りれるかどうか、が最優先となります。
金利や担保など、条件交渉など、
している場合ではなくなってしまいます。

銀行が有利に立つ借り入れは、絶対にしてはならない

銀行団は今、自分たちが東芝の心臓を握っており、
いつでも握りつぶせる、という思いの中で、
東芝との交渉の土俵に立っています。
表面上は、
“東芝が破たんすれば、
社会的影響があまりにも大きいですから、
 継続融資の姿勢で対応してゆきます。”
などとコメントしています。
が、それはしょせん、建前です。
銀行団が圧倒的に有利な立場なのです。
回収の見込みがないと判断すれば、いつでも、
融資停止のスイッチを、入れることでしょう。

 

中小企業においても、同じようなことが起こります。
返済が膨らみ、手元のキャッシュで返せなくなると、
返すために、借り始めます。
そうなると、資金繰りに追われる日々が続きます。
そのことばかりに時間や労力が、奪われてゆきます。
いったんこのループに入ると、簡単には抜け出せません。
借りれば返せる、と、誤った考えをもってしまうのです。
実際には、借りれば返済がますます膨らむだけです。

 

銀行は、会社の資産だけでなく、個人の資産も見ているのです。
貸せる限界をわきまえています。
その限界を超えるようなら、
いつでも態度をコロッと変えるのです。
銀行が有利に立つような借り入れは、
大企業・中小企業を問わず、絶対にしてはいけないのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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