今回は、銀行が提案してくる「コミットメントライン契約」の落とし穴を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「融資額をコミット(確約)します」

銀行用語を聞いていると、
わかったようでわからない、
聞こえ心地の良い横文字が、いくつもあります。

 

“〇〇銀行が、
「御社なら、コミットメントライン契約ができますよ。」
と、言ってきましたが、どんなもんでしょうか?”
との質問を、受けることがあります。
結論は、
“やめておきなさい。”です。

 

コミットメントライン契約は、
一年間のなかで、〇億円とか融資可能枠を定め、
その期間中、いつでも即座に借りれるようにします、
というものです。
銀行員は、そう説明するそうです。
こう聞くと、ますます良さそうに感じます。
「結果にコミットする」という、どこかのCMがある通り、
「融資額をコミット(確約)します」、というわけです

 

どこの会社でも契約できるものでなく、
優秀な御社ならできますよ、と言ってくるところがまた、
銀行員の営業戦略トークです。
その言葉でまず、目の前の相手を気持ちよくさせます。
不信感をとりのぞくのです。
要は、おだてられているだけです。

無条件でいつでも借りれるものではない

おだてられて気持ちよくなっているところへ、
手数料と条件の話しになります。
1)金利とは別に、手数料が必要です。
  期間中に借りた金額の金利とは別に、枠の総額に対する手数料が要ります。
  枠の総額に対する手数料ですから、当然、高くつきます。
金利とは別に、ですから。

 

2)即座に融資するための、財務状況の制限があります。
  自己資本比率〇〇%以上、などの条件が課せられます。
  居酒屋ワタミは、この条件をクリアするため、
  介護事業と宅配事業の儲け頭を売却しました。
コミットメントライン枠での融資がないと、
資金が回らない状況に陥っていたのです。

 

結局、手数料は高くつくし、
無条件でいつでも借りれるものではない、ということです。
枠のなかならいつでもすぐに融資します、
と言われると、“資金繰りが危ないときでも安全”
と、勝手に勘違いしてしまい、契約してしまうのです。
銀行がそんな会社に貸すわけがないのです。

 

インターネットで検索すると、
コミットメントライン契約を締結しました、
という上場企業の通知がたくさん出てきます。
そこには、財務基盤を強固にするため、とか、
機動的な資金調達を可能にするため、などと書かれています。
なかには、「〇〇〇億円の融資枠を獲得しました!」
と、自慢げに記載している会社もあります。
これらの会社への投資は、要注意です。
財務に明るい人材が、いない証拠なのですから。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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