コストをかけない「スモールキーワード戦術」
インターン期間中は、月に一度の研修会と、企業と学生、コーディネート機関の3者間でプロジェクト会議が開かれます。ここでは、学生が主体となったプロジェクトの進捗状況を共有し、半年後にどんな結果を残していくのかといったすり合わせをしていきます。
実は、このサポート体制がプロジェクト達成のカギです。企業と学生の適切なマッチングが実現し、学生の本気が引き出される。そうすることで、予想もつかないような化学変化が起きるのです。
[図表1]丸八テント商会のホームページ
2006年にウェブ事業をスタートしたときは、ヤフーとグーグルで検索すると「丸八テント商会」がトップに出てきました。ところが、検索エンジンの優先順位の基準が変わったことで検索結果の順位は下がり、クリック数が激減したのです。
一方、アウトドアグッズの人気が上昇し、「テント」というキーワードで検索するとキャンプ用テントが上位に出てくるようになりました。「スノーピーク」や「コールマン」などのテントメーカーが上位になり、業務用テントはどう頑張っても順位が上がらない。
そこで有料サイトに広告を打ち、アマゾンやヤフーショッピングに情報を出すことで、販売数を伸ばしていきました。しかし、反応を得るためにはコストがかかります。コストをかけた割には結果が出ない。その状況を打破するために学生たちが考案したSEO対策が「スモールキーワード戦術」です。
「テント」だけでは大きなくくりになってしまうので、検索されやすいキーワードを絞り、たとえば「地域名」+「テント」のパターンでヒット率を上げるというもの。「名古屋テント.com」のドメインは年間500~1000円程度で購入できます。そのページに自社ホームページのブログや施工例、Q&Aを貼り付けていくことで閲覧数を上げ、販売につなげるのです。
他に学生が購入したドメインには「幼稚園テント.com」があります。
なぜ幼稚園かというと、国や行政が子どもの安全に関する施策をとったとき、テントの発注につながりやすいからです。たとえば夏の時期は、手洗い場や幼稚園のプールなど、直射日光が当たる場所にオーニングという電動のテントを取り付けたいというニーズが増えます。それに合わせて、新商品の紹介や遮熱テントによって温度が何度下がるといったデータを学生たちがアップしていきます。すると検索キーワードでヒットし、注文が次々と舞い込んでくるのです。
[図表2]年間平均売上件数推移
ウェブ強化により大手企業との直接取引が増加
メディアに紹介されたあとや、特に休み明けの月曜日は事務所の電話が鳴りやまないほど問い合わせが殺到しています。ウェブは一日800〜1000クリックと閲覧数が激増し、1カ月のPV数は1万件、新規の問い合わせは毎日10件は下りません。そのすべてに学生たちが対応しています。問い合わせに答え、依頼があれば見積もりと図面と写真を送り、契約まで自分たちで進めるのです。
ウェブを強化したことで起きたもうひとつの変化は、大手企業からの発注が増えたこと。通常は問い合わせが直接届くことはなく、ビルのオーナーや管理会社はテントの需要があれば設計士やゼネコンに相談します。以前は、そこから下請けとして注文を受けていたのですが、今やネットで検索すれば施工実績が山のように出てきます。
サイトから問い合わせのページに直接アクセスしてもらえれば、ダイレクトに取引ができる。学生たちの発信によって、ディズニーシーやユニバーサル・スタジオ・ジャパンから施工依頼の発注がありました。ウェブの活用は、「脱下請け」にも効果があったのです。
[図表3]ブログ更新数推移