前回は、ウェブの有効活用に力を発揮した学生たちの事例を取り上げました。今回は、「価格の透明化」というところで、新しい発想を見せてくれた事例を紹介します。

業界で初めてカタログの全商品に価格を表示

全商品の価格を明示したことも、ウェブで成功した要因です。

 

私は取引先から「カタログに価格を明示してほしい」とよくいわれていました。しかし、テント業界では依頼を受けて、見積書をつくるのが通常の流れで、カタログに金額を明示するのは業界のタブーなのです。

 

それは顧客の懐具合によって価格交渉ができるのと、明示してしまうと競合他社と値下げ合戦になってしまうからです。しかし、同じように受注製作の看板会社は値段が明らかにされています。名古屋のある会社がカタログにすべて価格を載せたのを機に、他の看板会社も価格が入ったカタログをつくり出しました。

 

なぜ、テント業界にはそれがないのか。

 

価格を載せないのは自分たちにとっては都合がよくても、お客様にとっては分かりにくい。それなら、お客様の意見を大事にしたほうがよいのではないか。しかし、そう気づいてからも、カタログやホームページに価格を載せなくてはいけないと思いつつ、載せられずにいました。

 

ここで活躍したのは、愛知大学経営学部のIさんです。彼女は会計学に明るく、事務手続きや書類整理が得意。総合カタログ約300ページをほとんど一人で作成し、約2000点の商品をまとめて、ホームページに価格を掲載することができました。

 

ホームページが完成すると、全国のテント会社から「勝手に価格を決めるな」とバッシングがありましたが、そこまで反響があったことは反対に喜ばしい結果です。

 

金額にまつわることすべてを透明化したので「丸八テント商会のホームページを見れば分かる」という状況をつくることができました。これでお客様は安心して問い合わせができます。さらに、価格交渉に持ち込まれるリスクも減りました。ネット上で価格を明記したことで、それを値切ろうとする人が圧倒的に減ったのです。

歴代インターン生による蓄積情報が会社の強みに

新商品が出るたびにIさんはカタログのページを増やしていきます。

 

商品アイテムが増えるにつれ、露出も増える。テントに関する詳しい情報と、新商品カタログ、ニュースを毎日アップしていくことで「テントのWikipedia」のようになり、私の会社の情報が日本全国へ流れているのです。

 

ホームページ作成もブログ更新もSEO対策もすべて学生が動き、足りない知識は本を読んで勉強をする。ウェブからの新規受注で年間2億5000万円の売上高があります。これは歴代のインターン生たちが毎日毎日、コツコツと積み重ねてきた結果です。根気よく情報を流さないと、ここまでは到達できません。

 

ある意味では、「丸八テント商会」という名の下のテント専門のウェブ会社ともいえます。国内で成功したこのノウハウを活かし、今後はインドで展開する予定です。

 

[図表]学生がつくったカタログ

本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

佐藤 均

幻冬舎メディアコンサルティング

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