新規受注のきっかけを作った、学生によるメディアへの広報活動

前回は、学生のアイデアと行動力で実現した「価格の透明化」について紹介しました。今回は、学生のメディアへの広報活動を通じて、企業の知名度アップを実現した事例を見ていきます。

プロジェクトは注目を浴びることで活性化する

広告予算が確保できない中小企業にとって、コストをかけずに簡単に知名度を上げる方法が、メディアに取り上げられることです。しかし、下請け仕事をしているだけでは新奇性もなく、メディアから注目されることはありません。

 

新商品を生み出し、注目を集めるような変わった取り組みがしたいけれど、何から始めればよいのか分からない。その悩みも、私たちは長期インターンシップ制度で解決しました。

 

大学生が動かしているプロジェクトというだけで差別化でき、注目されやすい。さらに、学生は横のつながりが強いので学生を巻き込むだけで自然と人が集まってくるのです。

 

みんなの森 ぎふメディアコスモスの実績は数々の雑誌に掲載され、丸八テントの名が業界に広がるきっかけとなりました。T君が発信して800人もの人数が集まったように、学生が友達を呼び、さらにその友達が友達を呼び……といった具合に、若い人たちに広がったのです。

 

若い人が集まれば、活気が生まれます。「何か楽しそうなことをしている」と注目を浴び、プロジェクトは活性化する。さらにインターンシップで若者を集めた実績が、「丸八テント商会」の名を広めてくれるきっかけとなるのです。注目を浴びることによって社員のモチベーションアップ、まだインターンシップに来ていない学生たちへのアピールにもつながっています。

 

また、学生たちはTVや雑誌、新聞など、ブログやSNSを通じてさまざまなメディアへ広報活動をしてきました。その結果、それらメディアからの取材依頼は以前とは比較にならないほど増え、この4年半で30件以上となりました。そうやって露出を増やしていくことで、学生たちへの周知だけでなく、新規受注のきっかけにもなりました。

 

大手企業から発注されることも増えました。最も驚いたのは、宮内庁から電話をもらったことです。イベント運営会社との取引はあるけれども、テント会社とはパイプがないので、取引ができる資格を取ってほしいと、依頼をいただきました。

 

また、世界的に有名な豪華客船が国内のある港へ入港する際、乗客を下ろすときのテントをつくってほしいという依頼もありました。この案件に関しては、契約に結びつけるため、現在も奮闘中です。

留学生の受け入れは海外進出のチャンス

2016年には一般財団法人日本国際協力センター(JICE)から「アフリカからの留学生を受け入れてほしい」と連絡がありました。インドに続き、東南アジアや暑い地域の国に遮熱製品を伝えたいという構想があったので、アフリカにパイプをつくるチャンスです。そのうえ、大企業ばかりが載っているJICEの会報誌にも「丸八テント」の名前が出る。これもひとつの戦略です。

 

アフリカからのインターンシップ受け入れを担当するのは、語学系の学科に所属する女子学生2人です。スケジュールや短期プロジェクトを考え、JICEとの連絡やインターンシップにまつわる一切の準備をしています。

 

インターンシップに来る留学生は、国の予算で勉強をしている優秀な人材です。母国に戻って遮熱製品のことを伝えてもらうには、1週間という短い期間ですがしっかりと情報を吸収して帰ってほしい。母国に帰り、アフリカの学生たちがどんどん情報を発信してくれれば、私の会社に関わってくれる海外の人材は増えていくでしょう。特に東南アジアは暑い地域なので、将来的なマーケットの種まきになる。それに向けてJICEのプロジェクトを担当している2人は、テントのことだけでなく日本語教育やビジネスマナー研修の資料まで作成しています。

 

学生たちが日々更新しているブログは、国内の受注を増やし、海外からの関心を集めているのです。

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    株式会社丸八テント商会 代表取締役社長

    1960年愛知県生まれ。1979年名古屋市立工芸高校卒業後、祖父が1951年に創業した丸八テント商会に入社。職人として製造現場で経験を積んだ後、海外の店舗で使用されるオーニングなどを撮影し、全6冊にも及ぶ世界のテントフォトブックを営業ツールとして自作。2005年の愛・地球博や2010年の上海万博では、大手企業の展示会ブースを手がけるなど、卓越した発想力と行動力でテント業界に新しい風を吹き込む。
    いち早くインターネットビジネスを活用し、自社HPのPV数(閲覧者)は1日に800~1000人となるなど“営業しない営業”のモデルを構築、他社との差別化を図る。また、伝統技術を活かした西陣帆布、西陣カーボンをプロデュース。JAPANブランド育成支援事業として経済産業省の認定を得る。伊東豊雄が設計した、“みんなの森・ぎふメディアコスモス”のグローブに携わる。
    2015年には、映画「シン・ゴジラ」の劇中で使用されたテントを施工した。“ものづくりから、ひとづくり”を信条に、これまで培ってきたプロデュース力を活かして、地域の中小企業を応援しようとミチカラプロジェクトを発足。地域の役に立てるテント屋さんを目指している。一般財団法人日本国際協力センター(JICE)国際協力機関「外国人が日本で働く」セミナー講師をはじめ、各地でセミナー講師を務める。

    2000~2001年 日本テントシート工業組合青年部会長
    2003~2005年 愛知万博飛行船Bプロジェクト実行委員
    2016年~ 愛知県テントシート工業組合理事長

    著者紹介

    連載事業拡大を実現する!中小企業のための長期インターン活用戦略

    本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

    事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

    佐藤 均

    幻冬舎メディアコンサルティング

    中小企業にとって「採用」は非常に大きな問題です。新卒学生の大手志向が進み、中途採用も思うようにはできない時代。優秀な人材ほど条件面で折り合わない等の問題があり、人材獲得は困難を極めます。しかも、中小企業における…

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