日本人が「不動産の所有権を確保できる」国を選ぶ
投資においては、まずその目的をはっきりさせる必要があります。海外不動産投資であれば、不動産を保有することによって、値上がり益を得るのが目的なのか、毎月の安定した賃料を得ることが目的なのか、あるいは減価償却を使った節税が目的なのかによって投資対象が変わってきます。また、本連載の第4回で説明したように、自分の人生の目標に合った資産形成を考え、不必要なリスクを取らないことも重要です。
投資の前に、自分の目標やそれに必要な金額を明確化し、海外不動産投資を資産運用に活用したほうがよいと考えたら、次はどのエリアに投資をするか検討していくことになります。投資対象とする国・地域は、日本人が海外で不動産の所有権を確保できるところにすべきです。そのようなエリアの中から、まずマクロのデータを調べ、投資エリアを絞り込んでいきます。
これは、現地に行く前に日本で情報収集をしておくべきことになります。自分が投資したい国・地域が決まったら、次のステップとして実際に現地に行って、ミクロの情報収集を行い、最終的な投資物件を選択していくのです。このような、マクロからミクロへというアプローチを取ることで、後悔のない海外不動産投資が実践できると思います。
【図表】海外不動産投資のプロセス
人口動態・空室率を調べ、賃貸物件市場の動向を把握
では、日本で調べておくべきマクロデータとは、具体的にどのようなものになるでしょうか。経済データとして調査すべきものは、経済成長率やインフレ率など、賃貸物件市場の動向を知るためのデータとしては、人口動態や空室率など、物件価格の動きを知るためのデータとしては、今後のインフラ整備の予定や過去の不動産価格の推移などが挙げられます。
経済成長は不動産投資を考える上で最も重要なファクターです。経済成長が高まれば、地域の経済活性化によって不動産市場にもポジティブな影響があるからです。ただし、過熱した経済が不動産の急激な上昇を引き起こしているような国は、価格がすでに割高になっている場合が多いので投資対象としては避けるべきです。
また、新興国は以前に比べれば落ち着いてきているものの、依然として先進国に比べればインフレ率は高くなっています。インフレによって購入した物件の現地価格や家賃が上昇するのは投資にとってプラスになりますが、通貨価値の下落が進めば、円ベースでの投資リターンにマイナスの影響が出るリスクもあります。
人口動態も重要なファクターです。人口の変化については、国全体で捉えることも重要ですが、自分が購入しようとしているエリアにおける人の動きを知ることができれば、より正確な人口動態に関する判断が可能になります。多くの都市では個別に人口に関するデータを発表していますから、それらを探してみるようにしましょう。人口に関しては年齢別の人口ピラミッドの形状や、平均年収も投資判断材料になります。20代の人口が多ければ、今後結婚して賃貸住宅に住もうという世帯が増えることが予想できますし、平均年収の高いエリアや賃金が上昇しているエリアであれば、家賃収入が高く設定できることがわかります。
また、特に新興国では、インフラ整備によって道路や鉄道網が発達し、その周辺の不動産価格が上昇するのはよくあるケースです。過去の物件価格の推移だけではなく、これからのインフラ開発計画についても情報を集めておくとよいでしょう。
日本にオフィスを構えながら、現地の情報を豊富に持っている不動産会社もあります。ネットや書籍で調べるだけではなく、現地に行く前にこのような日本のオフィスを訪問して、現地情報について教えてもらえれば有益であり便利です。