前回は、多くの日本人が抱えている「日本リスク」について取り上げました。今回は、日本が抱える財政問題について見ていきます。

年収400万円の人が1億円の借金をしている状態!?

日本の将来に関して、不安を持つ日本人が増えています。その理由の中で一番大きいのが国の財政問題です。図表1は日本の債務残高の時系列の推移を示したものです。高齢化に伴う社会保障費の増大に伴い、国や地方の財政は悪化が続き、2013年には債務残高が1000兆円を超えていることがわかります。

 

 

[図表1]国の債務残高

※各年12月末時点の残高財務省『国債及び借入金並びに政府保証債務現在高』より作成
※各年12月末時点の残高 財務省『国債及び借入金並びに政府保証債務現在高』より作成

 

日本における1年間の税収は、40兆円程度ですから、現在の債務残高は、その25倍の債務に膨らんでいる計算になります。この債務の大きさをたとえて言うならば、年収400万円の人が1億円の借金をしている状態です。多くの国民が、その借金の返済に大きな不安を感じるのは当然のことです。

 

また、少子高齢化も進んでいます。日本はすでに人口減少フェーズに入っており、今は人口が増えている東京でも、オリンピックが開催される2020年には人口減少に転じると予想されています。国連が発表している世界の人口推計のデータを見ると、2065年には、日本の人口は1億人を切ると予想されています。現在より3割近く人口が減少するのです。

 

今後人口が増えていくのは先進国では移民を受け入れているアメリカのような国だけになります。書籍『究極の海外不動産投資』第3章で詳述していますが、アメリカの人口は現在約3億人です。しかし、人口は2050年までに4億人に達するとされています。日本が3割人口を減らす時にアメリカでは3割人口が増えるというわけです。

 

国のGDP(国民総生産)は、労働人口と1人あたりの生産性のかけ算によって決まってきます。人口が減少していくということは、それを補うだけの生産性の向上がなければ、経済成長が止まることを意味するのです。

 

[図表2]日本の人口推計

国際連合 “World Population Prospects” より作成
国際連合 “World Population Prospects” より作成

高額納税者の海外流出を招いている「課税強化」

国の財政状態の悪化を食い止めるために、政府は税制を改定しています。法人税については、グローバル競争の観点から引き下げの方向を示していますが、個人に対する課税は今後さらに強まると見られます。2014年4月からは、消費税が5%から8%に引き上げられました。

 

また、所得税や相続税も取れるところから取ろうという方向になっています。例えば、対象所得が増えるにつれて税率も増える累進課税は、日本では所得税、贈与税、相続税などで導入されていますが、今後の税制改正により、所得税や相続税への課税が強化され、所得税は最高税率が40%から45%へ、相続税は50%から55%(6億円超の税率構造を新設)へ引き上げられます。

 

 

[図表3]所得税の最高税率の見直し(2013年度改正)

財務省ホームページより作成
財務省ホームページより作成

 

このように特に富裕層に向けての課税強化が今後進もうとしている中で、海外に脱出することで、日本への納税を回避する人も現れています。個人に対する課税強化は、多額の税金を払うべき人の海外への流出をもたらし、国の財政をさらに悪化させてしまう恐れがあるのです。

 

所得税の課税強化に対して、合法的な手段によって対抗する動きも出てきています。例えば不動産の償却を利用することで課税金額を下げることが可能です。特に、法定償却年数を超えた中古の木造物件を保有した場合、建物部分を4年間で減価償却できる特例が日本の税制では認められています。海外不動産を保有している場合でも、日本での納税を計算する際にこのような減価償却の特例を戦略的に活用することができるのです。

本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『究極の海外不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
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