仕事、住居、教育のすべてが日本で完結・・・
大多数の日本人は、金融資産の多くを日本円で保有しているだけではなく、日本の企業で働き、日本円で収入を得て、日本でマイホームを購入し、子どもには日本の教育を受けさせています。
このようにお金だけではなく、ライフスタイルすべてが日本という国に集中している状態を、私は「日本リスク」と呼んでいます。しかし、この日本リスクは2011年に東日本大震災が起こるまで、日本人の多くには認識されていませんでした。なぜなら、日本に集中させることによるデメリットよりもメリットのほうが大きかったからです。
バブル崩壊後の1990年代からの約20年間は、円高、株安、デフレの3点セットが続きました。このような環境下では、今でも多くの日本人が行っているような円の預貯金による資産運用が最もよい結果をもたらしていました。資産だけではなく、仕事、住居、教育など、すべてを日本でという生活が、多くの日本人にとって当たり前だったのです。
しかし、このような日本に集中するライフスタイルには問題があることに、多くの人が気付きはじめました。仕事に関しても日本企業はグローバル競争に入り、海外展開を進める企業が増えてきました。
また、外国人を採用する企業も増え、社内競争は日本人同士だけのものではなくなっています。賃金は上がらず、雇用を失うリスクも高まっています。日本企業で長年勤務している人の中には、仕事のスキルが陳腐化している人も多く、転職できないリスクも高まっています。
日本の大学教育も世界的には価値の低いものに!?
マイホームもリスク要因のひとつです。日本の地価は全体として低下傾向ですし、住宅ローンの返済も変動金利で借り入れしていれば金利上昇によって、将来の返済額が高まる可能性があります。また、給与の引き下げやリストラによって長期の住宅ローンが返済できなくなるリスクもあります。
日本の教育も、子育てをしている人にとっては、これからリスクとして認識されてくるでしょう。グローバル化が進む中、国内の大学は少子化によって学生を集められない学校が増え、優秀な学生は海外に行ってしまうという問題も出てきています。世界における日本の大学ランキングを見ると、東京大学でさえ23位にすぎず、他に100位以内に入っているのは京都大学(52位)しかありません。
[図表]世界の大学ランキング(2013年)
つまり、世界的に見れば、日本の大学で教育を受ける価値はあまりないということです。日本の学歴社会が崩壊すれば、日本の教育システムそのものが、大きなリスクになってくると言えるのです。このような「日本リスク」から自身を守っていくためには、日本にコミットしている現状をグローバルに分散していくことが重要です。
しかし、分散しようとしても難しいものもあります。例えば、仕事を日本から切り離そうとしても、外資系企業に転職したり、海外に出て行ってそこで転職したりするのは簡単ではありません。マイホームも仕事の制約や家族の問題がありますし、売却も簡単にはできません。子どもの教育にしても、日本の学校からいきなり、海外のインターナショナルスクールに行かせることができるのは、限られた人だけになるでしょう。
さまざまな日本リスクの中で、すぐにできるのが金融資産の分散です。ですから金融資産の一部を外貨資産に振り向けていくのが大切なのです。