前回は、自己破産の手続きについて解説しました。今回は、自己破産せざるを得ない場合のメリットを見ていきます。

免責許可を受けた時点ですべての借金が「帳消し」に

私の会社で任意売却を手がけた依頼人の多くは、自己破産することなく生活の立て直しに成功します。これまで説明してきたとおり、任意売却を行うことで債務を最小限にし、残債の返済についても、経済的に無理のない額に抑えられるため、自己破産しないという選択肢があるということです。

 

ただし中には返済を続けるのではなく自己破産を選ぶ人もいます。彼らのほとんどは「それしか道が残されていないから」ではなく、「そのほうがメリットが大きいから」という理由で自己破産することを選ぶのです。

 

【自己破産のメリット】

 

① すべての債務について返済義務がなくなる

 

裁判所の監督下で債務者の財産を現金化し、債権者に分配する手続きが破産です。それに伴って進められる免責の手続きにより、裁判所から免責許可を受けることで、自己破産申告時点で抱えていたすべての借金を返す義務がなくなります。

 

② 弁護士や司法書士に手続きを依頼すると返済の督促状や電話連絡などがなくなる

 

債務整理を依頼された弁護士や司法書士は債権者に対して「受任通知」を発送します。貸金業法やサービサー法により、「受任通知」を受け取った後の取り立て業務が大幅に制限されているので、金融機関はほとんどの取立行為を停止します。

差押えが解除され、ある程度の財産を残すことも可能に

③ 手続き開始後は給与の差押えなど強制執行が実施されない

 

返済の滞納が続くと給与などを差押えられてしまうことがあります。自己破産手続きと同時に強制執行停止の手続きをすることで給与の差押えを解除できます。また免責が許可されれば債務がなくなるため、その後、給与を差押えられることはありません。

 

④ ある程度の財産を残すことができる

 

自己破産では保有財産を現金化して債権者に分配しますが、一定の財産は債務者の生活を維持するために必要であるとの考えから除外されます。預貯金は20万円まで、現金は99万円まで保有できる上、家具や家電なども評価額が20万円以下のものや生活に必要なものは換金処分されません。

 

⑤ 自己破産後に得た収入はすべて自分のために使える

 

自己破産に伴う免責許可は申立時点の債務を免除するものですから、その後に得た収入は債務者がすべて自分のために使うことができます。住宅ローンの返済に苦しんできた人にとって、もっとも大きなメリットといえます。

 

このように自己破産には生活再建という面で非常に大きなメリットがあります。

 

しかしながら一方で一定のデメリットもあるので、検討する上ではしっかり意識しておくことが大切です。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

住宅ローンが払えなくなったら読む本

著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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