前回は、債務整理を行う際に留意すべき「連帯保証人」への影響について取り上げました。今回は、弁済を求められた保証人がとり得る「四つの選択肢」を解説します。

債務者が「個人再生」「自己破産」を選択すると・・・

前回の続きです。

 

●「個人再生」もしくは「自己破産」を選んだ場合

 

「個人再生」および「自己破産」では、債務者はどの債務を整理するかを選ぶことができません。保証人がついている債務が対象となり、返済が受けられなかった場合には、債権者は必ず保証人にその分の返済を求めます。ただし「個人再生」では第3回で解説したとおり住宅ローンは対象外とされているため、住宅ローンの保証人については影響が及ぶことはありません。

 

弁済を求められた保証人には主に四つの選択肢があります。

 

① 請求された額を全額弁済する

保証人に資産がある場合には、とり得る手段です。

 

② 任意整理をする

金融機関と交渉を行い、返済額の減額を求めます。返済を続けるだけの収入がなければ選択できません。

 

③ 自己破産する

弁済不能な場合には、自己破産手続きを行うことで、金銭的な負担から解放されます。

 

④ 任意整理も自己破産もしない

債務を放置するのではなく、金融機関と話し合い、「これだけしか支払えない」と支払い可能な額を債権者に示すことで、合意を得る方法です。ただしこの方法には、金融機関の事情次第で、いつ何時、給与財産や預金財産、不動産、生命保険などを差押えられるかわからないというリスクがあります。

「連帯保証」と「連帯債務」の違いとは?

住宅ローンを組む上で、連帯保証とともによく見られるのが「連帯債務」です。住宅ローン破綻に際して、返済義務を負うという点では同じなので混同されがちですが、異なるポイントも多いので、債務整理を考える上では違いを理解しておくことが大切です。

 

【連帯債務】

文字どおり、連帯して債務を負う仕組みなので、債務者に「主従」の関係がありません。通常、住宅ローンの場合には共働きの夫婦などが住まいの名義を共有するのとセットで連帯債務とするケースがよく見られます。

 

債務者のそれぞれが住宅ローンに対して同じ立場で返済義務を負うため、債務者の1人が支払えなくなると、その分を他の債務者がカバーすることになります。たとえば3000万円の債務を負う連帯債務者の1人が死亡した場合、債権者は残っている債務者に3000万円の返済を求めることができます。

 

【連帯保証】

連帯債務との違いは債務に「主従」の関係があることです。あくまで債権者と主債務者との金銭貸借契約があって初めて保証契約が成り立つので、主債務者との契約が消滅した場合には、保証契約も失効します。

 

3000万円の債務を負う主債務者が死亡した場合、債権者との間で取り交わされた契約がなくなるため、保証契約も消滅します。債権者が連帯保証人に債務の返済を求めることはできなくなるのです。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

住宅ローンが払えなくなったら読む本

著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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