生活費、引っ越し費用、敷金・・・国が全て負担!?
前回で解説したのは信用情報だけに問題があるケースですが、「家賃を支払えるだけの収入がなく、保証人も見つからない」というケースもあります。その場合、独力で賃貸住宅を借りて住むのは難しいため、生活保護など国の支援を利用します。
生活保護の申請が認められれば、生活費の他、引っ越し費用や敷金、礼金も国が負担してくれます。確実に家賃が徴収できるため、生活保護費受給者の入居を歓迎する大家もいるので、家探しの苦労はなくなります。
生活保護にはあまりいいイメージがないため、積極的に受けようとする人はほとんどいません。しかし生活保護は国が定めた国民を守るための制度であり、受給することは国民の権利です。生活再建のために利用することをためらう必要はありません。ただし、生活保護を受ける暮らしには通常と異なる制限が課せられるので、事前に確認しておくことが大切です。
預貯金の存在が発覚すると受給停止になるケースも
【生活保護を受ける上での制限事項】
①預貯金を持てない
生活保護費として支給されるお金は生活を維持できる最低限の額とされているので、預貯金は支給の目的とは矛盾するものです。そのため預貯金の存在が発覚すると、受給額の減額や受給停止という処分が下されることがあります。
②借金ができない
借金をすると受給したお金で返済することになり、やはり生活費を賄うだけという本来の用途とは矛盾します。借金がある場合には、自己破産など債務整理手続きをしてから申請するのが原則です。
③財産を持てない
不動産など「プラスの財産」がある場合には、「処分して生活を賄うことができるはず」と考えられるため、生活保護費の受給ができません。ただし住宅ローンの滞納により不動産を任意売却する場合は負債のほうが大きく「マイナスの財産」と見なされるため、受給が可能です。自家用車が財産に当たるかどうかはしばしば議論されるポイントですが、地域により判断が分かれます。交通網が発達しておらず、車がないと生活が成り立たない地域では、保有が認められますが、都市部など車なしでも十分生活できるエリアでは認められません。
④ 保険に加入できない
掛け捨ての保険であれば認められるケースもありますが、貯蓄型の保険は財産に当たるため加入できません。また医療費は生活保護費とは別に支給されるので、医療保険に加入する必要性はなくなります。
⑤ 健康保険証を持てない
医療費は福祉事務所から受け取る医療券で賄うため、健康保険証は返還することになります。受診できる病院は指定された医療機関のみであり、緊急時以外はその他の病院で治療を受けることはできません。
⑥ 居住できる物件に制限がある
生活保護下では家賃は住宅扶助として別立てで支給されます。エリアごとに上限が決まっているため、家賃がそれ以下の物件にしか住むことができません。
⑦ 経済状況を報告する義務がある
受給額が適正かどうかを確認するため、収入と支出について定期的に報告する義務が課されています。報告を怠ると不正受給と見なされることがあります。
⑧ ケースワーカーの指導に従う義務がある
生活保護は基本的に自立して生活できるよう支援するための制度です。そのためケースワーカーによる就職活動の指導や就職先の紹介などがあり、従うよう義務づけられています。