前回は、生活保護の受給に伴う「生活上の制限」について取り上げました。今回は、債務者本人が下すべき「自己破産」という決断について、改めて見ていきます。

メリットとデメリットを確認し、ベストな選択を

自己破産すべきかどうか、というのは私がよく相談を受けることの一つです。相談先によってこの問いに対する答えは大きく異なります。

 

弁護士など法律の専門家は「自己破産すべき」という人が大半です。彼らにとっては依頼人が自己破産してくれることが自身の収益につながるからです。任意売却を専門とする会社はほとんどが「自己破産しなくていい」と答えます。彼らは法律家ではないので、自己破産についてアドバイスしたりサポートすることができません。そのため相談者の事情とは関係なく「しなくていい」というのです。

 

私自身は自己破産のメリットとデメリットをしっかり確認してもらった上で、債務者にとってベストな選択をしてもらえるようにすることが大事だと考えています。

 

本連載で解説してきたとおり、自己破産には特に金銭面で大きなメリットがあります。債務を抱えての暮らしには常に不安がつきまといます。任意整理などで返済額を減らせたとしても、その負担すら賄えなくなるかもしれません。自己破産して債務をなくせば、そういった不安をクリアして、経済的には新たなスタートを切ることができます。

 

一方、クレジットカードが使えないことや職業の制限などのデメリットは一時的なものであり、一定の期間が過ぎればなくなります。「損得」で判断するなら、自己破産することを選んだほうが、お得なことは多いといえます。

お金の問題だけでなく、心の問題も大切に

しかしながら人は「損得」だけでものごとを決めるわけではありません。「辛い状況でも自己破産せずに頑張れた」というプライドを感じられることが自分には大切なのだ、という人もいます。特に高齢者には自己破産することに罪悪感を持つ人が少なくありません。そういう人にとっては「自己破産しなかった」という事実が心情的なメリットとなります。

 

お金の問題はさておき、心の問題として自己破産はしないというのも、一つの選択だと思います。もう一つ、自己破産を選択しない人が理由に挙げることとして「保証人への影響」があります。保証人がいる場合、一般的には債権者から保証人に債務返済の請求が行われます。このことは自己破産を選択する上で大きな検討課題といえます。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

住宅ローンが払えなくなったら読む本

著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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