前回は、「債務整理」の4つの方法を取り上げました。今回は、自己破産の手続きについて見ていきます。

自己破産の管財事件と同時廃止事件の違いとは?

自己破産には「管財事件」と「同時廃止事件」という2つのケースがあり、それぞれ手続きなどが異なります(下記図表参照)。自己破産をする場合には通常、破産管財人を立て、その監督の下で債務者の保有する財産を換金処分し、債権者に分配します。このケースを「管財事件」と呼びます。

 

ところが分配できる財産がない場合には、管財人を立てて財産を分配するという手順が不要なので、破産手続きが始まると同時に終了します。これを「同時廃止事件」と呼びます。

 

[図表]自己破産の手続き

 

「管財事件」と「同時廃止事件」では債務者の費用負担が大きく異なります。「管財事件」では裁判所への予納金や弁護士費用を合わせると少なくとも50万円以上の費用は必要です。一方、「同時廃止事件」の場合には裁判所に支払う予納金が数万円ですむため、経費の総額は「管財事件」の半分程度ですみます。

 

最終的に免責許可が決定するまでにかかる日数にも違いがあります。「管財事件」では破産管財人が財産の特定や分配を厳しくチェックするなど手続きに時間を要するため、申し立てから手続き完了まで1年以上かかります。同時廃止事件の場合には事実上、免責手続きだけですむため、申し立てから免責許可決定までを半年程度で完了することが可能です。

自己破産は完了したのに、免責は不可ということも…

自己破産は裁判所に申し立てを行い、最終的に免責許可を得ることを目的とした手続きです。司法書士や弁護士への依頼→受任から始まり、借金をクリアして生活の再建を始めます。自己破産の手続きには「破産手続き」と「免責手続き」があります。「破産手続き」は申立時点において保有している財産を換金処分し、債権者に分配するものです。一方、「免責手続き」は「破産手続き」の後、債務の返済義務を免除してもらえるよう行うものです。

 

申し立ては一括でできますが、それぞれ独立した手続きであり、場合によっては「自己破産は完了したが免責は不可になった」ということもあり得ます。

 

破産手続きの始まりは地方裁判所への申し立てです。申し立てを受けて裁判所で審尋(面接による質疑)が行われます。その後、破産手続きが進められ、財産がない場合には同時廃止が決定され、破産が成立します。

 

一方、財産がある場合には管財事件となるため、管財人が選任されます。さらに管財人による面接があり、債権者集会をへて債権が確定された後、債権者に配当が渡され、破産手続きが終了します。

 

免責手続きは破産手続きに引き続いて行われます。免責について裁判官による審尋があり、免責が妥当と判断されれば、免責許可決定が下されます。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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