前回は、銀行から債権回収会社へ債権が移ると、債務者がラクになる理由を解説しました。今回は、状況に応じて選択できる「債務整理」の種類について見ていきます。

状況によっては、正当な経済的行為になる債務整理

「借りたものは返しなさい」──子どものころにそう教わった人は多いはずです。そのため債務の返済に行き詰まると、経済的なつまずきではなく倫理的に許されざることと考える人が少なくありません。

 

そのため「債務整理」についても制度を積極的に利用する傾向が低く、解決できるにもかかわらず、無理な返済に苦しむケースが多々見られます。しかしながら、債務者が返済不能に陥るのは本人のせいばかりではありません。リストラや離婚、病気などのリスクはほとんどの人が背負うものであり、経済的に行き詰まる潜在的な危険性は誰もが持っています。

 

ローン破綻しない絶対的な方法はローンを利用しないことだけです。けれどもそれではほとんどの人が家を買うことができず、不動産取引に対する依存度が高い日本の経済は行き詰まってしまいます。ある程度のリスクをとってローンを組み、万が一、返済に行き詰まった場合に債務整理をするのはごく正当な経済的行為と考えるべきです。

債務者の状況に合わせて4つの方法から選択

債務整理には「任意整理」「特定調停」「個人民事再生」「自己破産」という4つの方法があり、状況に合わせて選択することができます。

 

【任意整理】

任意整理はその名のとおり任意で債務を整理するやり方です。裁判所などの公的機関を利用するのではなく、一般的には弁護士や司法書士が介入して返済プランや債務の減額などについて交渉します。交渉結果は和解書という形で残されますが、この書面に法的拘束力はほとんどありません。

 

【特定調停】

裁判所の調停員が仲裁役として介入し、債権者との話し合いにより返済プランを決める方法です。任意整理とは異なり公的な手続きなので、成立した調停の内容を記した調停調書には裁判の判決と同等の拘束力があります。

 

【個人民事再生】

地方裁判所に申し立てをすることで、家を手放すことなく債務を圧縮できる方法です。住宅ローンは減額できませんが、それ以外の債務を大幅に圧縮できます。したがって住宅ローンの負担そのものが重すぎて支払えないケースには不向きです。住宅ローン以外にカードローンなどがあり、その負担を減らせば住宅ローンを支払うことができるようになる、という人に適しています。

 

【自己破産】

前述のような債務整理を利用してもなお返済できない債務を抱えている人が、地方裁判所に申し立てを行うことで債務をゼロにできるのが自己破産です。申立時点で保有財産の多くを提供することになりますが、無理な債務返済から解放され、経済的に再スタートを切ることができます。

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