ビールには尿酸のもとになる「プリン体」が多いが…
これまで見てきたように、ビールには体の酸化を食い止め、病気を予防する効果が期待できることが明らかにされてきました。
それにもかかわらず、最近は「プリン体ゼロ」とか「糖質ゼロ」のビールをよく見かけるようになりました。その背景には、どうやらビールを飲むと痛風になるとか太るとかいう、健康に悪影響を与える要因があるようです。
確かにアルコールは、痛風のマイナス要因になっています。なかでもビールには尿酸のもとになるプリン体が多く含まれていますので、痛風の人がビールを飲むのはよくないといわれるわけです。
痛風は、体内に存在するプリン体という物質が代謝された最終産物、つまり老廃物である「尿酸」が血液中で結晶化して発症する病気です。
尿酸は肝臓で分解された後、腎臓で100パーセント濾過されます。ところが、そのまま100パーセントが排出されるわけではなく、尿酸は老廃物であるにもかかわらず、尿細管で「再吸収」されるのです。
腎臓にたどり着いた尿酸のうち、最終的に尿として排出されるのはわずか10パーセント程度。残りの90パーセントは体に戻されます。ですから誰の血液にも一定量の尿酸は含まれています。
しかし、プリン体を摂り過ぎて尿酸の「産生」と「排泄」のバランスが崩れると体内に蓄積し、血液に溶けきれなくなった余剰分が結晶となり、足の親指の付け根などの関節に溜まります。
そして、この結晶が何らかの刺激を受けて関節から剥がれ落ちると、これを異物と認識した免疫細胞である白血球が排除しようと働いた結果、関節に炎症が起こって激しい痛みに襲われます。「風に吹かれただけでも痛い」ことが、その名の由来となっています。
プリン体は、細胞の中の核酸(DNAの主成分)などに含まれる成分で、細胞が生まれ変わる新陳代謝の際に使われるなど、生物が生きていく上で欠かせない物質です。プリン体はもともと体内に存在するほか、ほとんどの食材にも含まれているため、プリン体を多く含む食材を摂り過ぎると、処理しきれなかった尿酸が血液中に増えた状態(高尿酸血症)が続きます。
そこで、痛風の人は、尿酸を増やす原因となっているプリン体を減らすように指導されるわけです。
健康維持が目的なら「適量」であることが重要
ビールが尿酸を増やすのは確かです。他のアルコールと比べても、血液中の尿酸値が上昇しやすいこともわかっています。
尿酸のもとになるプリン体を、缶ビール350㎖では約20 ㎎含んでいます。これは、牛肉や豚肉100㎎に含まれるプリン体の約4分の1~5分の1の量です。これだけを見ると「大したことはない。ビールが痛風の大敵というのは間違いだ」と考えがちですが、多くの場合でビールを1缶で終わらせる人は少なく、大抵は2~3缶飲んでしまいます。ですからビールのプリン体含量が少ないとは、言い切れないところがあるのです。
特にクラフトビールの場合は、生きたままの菌や酵母が入っているものが多く、種類によっては発酵を続けていますから、どうしても核酸が多い、つまりプリン体が多くなっていますので、やはり飲み過ぎは良くないといえます。
痛風の人は、よく「プリン体を含まない焼酎やウイスキーを飲んでいるから大丈夫」といいます。ところが、実はアルコール自体が分解の際に尿酸を産生し、尿の中に尿酸を排泄する働きを阻害してしまうため、尿酸値が上昇するという事実があります。ですからプリン体を含まない焼酎やウイスキーなどの蒸留酒でも、尿酸値は上昇します。
ビールを大量に飲んだ後で、痛風発作を起こすことが多いことは昔から知られていますが、これは飲酒後に尿酸値が急上昇することによると考えられています。したがって、ビールも「適量」であれば尿酸値をあまり上昇させることはありませんが、焼酎でも「多量」に飲めば尿酸値を上昇させてしまうおそれがあります。
そこで、病気を予防して健康を維持する目的でビールを飲むには、適量が重要になってきます。