前回は、脳の仕組みから見た「認知症」発症のプロセスを取り上げました。今回は、脳の活動に「酸素」と「糖」がどのように関わっているのか等を見ていきます。

臓器の中で一番酸素の消費量が多い「脳」

体内の臓器の中で、一番酸素の消費量が多いのが脳です。わずか1400グラムですが、その消費量は全体の25パーセントにも及びます。そのため、酸素不足に対しては最も敏感に反応し、酸欠にはとても弱い器官でもあります。

 

筋肉のように酸素をある程度貯蔵することができない脳は、供給された酸素を一瞬にして使い果たしてしまいます。心臓が停止して酸素を運ぶ血流が止まれば、脳の機能も止まって、たちまち意識不明の仮死状態に陥ってしまうほどです。約145億個といわれる脳の神経細胞が正常に活動するためには、常に酸素を送り続けなければなりません。

 

脳を循環する血液の量は、1日2000リットルで、ドラム缶10本分に相当します。これは、人体の総血液量の400倍に匹敵します。これだけ大量の酸素が必要ということは、同時に活性酸素が発生するリスクも高くなるわけで、最も酸化(サビ)しやすいのが脳の神経細胞ともいえます。

脳は1時間当たり5グラムのブドウ糖を消費している!?

さらに、脳は最も糖分を必要とする器官でもあり、体全体のエネルギーの18パーセントも消費します。

 

しかも、他の臓器は糖質やタンパク質、脂質などをエネルギー源としているのに対して、脳はブドウ糖(糖質の最小単位)だけしか受けつけません。全体のブドウ糖消費量のうち、脳は半分近い46パーセントも消費しているのです。

 

私たちの体は、何もしない安静時でも脳だけではなく、心臓や肺など全身の器官が働いていますからエネルギーを消費しており、1日に約260グラム、脳だけでも120グラムのブドウ糖を消費します。

 

寝ているときでも脳は休みなく活動をし続けており、常に1時間当たり5グラムのブドウ糖を消費している計算になります。

 

ですから食事を摂らずにいると、脳にブドウ糖を供給するために、肝臓に蓄えていたグリコーゲンを分解してブドウ糖に換えます。それでも足りないときには、筋肉から作られたアミノ酸と脂肪細胞から作られたグリセロール(中性脂肪を分解して作られる)をもとに肝臓でブドウ糖を作って脳に送ります。

 

このようなことから脳にはブドウ糖という糖分が常に溢れていますので糖化(コゲ)しやすく、糖化によって脳に発生したAGEs(糖化最終生成物)が神経細胞を死滅させてしまいます。

 

糖化はアルツハイマー型認知症だけではなく、血管を構成しているコラーゲンが糖化されて脳血管にAGEsが溜まっても動脈硬化を起こして脳梗塞を招き、これが原因で脳血管性認知症になったりします。

 

したがって、認知症を防ぐには酸化と糖化を食い止める必要があるのです。

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大川 章裕

幻冬舎メディアコンサルティング

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