前回は、アルコールの飲み過ぎが「脳の神経細胞」に与える影響について説明しました。今回は、アルコール摂取量と認知症リスクとの関係を見ていきます。

アルコール摂取が体に及ぼす影響とは?

アルコールには利尿作用がありますから、これによって血液中の水分が奪われると血管が詰まりやすくなり、脳梗塞などを発症して脳血管性認知症の原因になることがあります。
約1800人の高齢者を対象にしたアメリカの住民調査では、「長期の飲酒で累積の量が増えるほど脳が萎縮している」ことが判明しました。

 

アルコールを分解するときにはビタミンB11が大量に消費され、脳の神経細胞が破壊されるなどして萎縮が進み、アルコールに関連した認知症の原因となるとされています(『週刊朝日』2014年8月22日号より)。

 

しかし、「少量のアルコールは認知症のリスクを低減する」という研究も多数あるのです。

 

1日あたりアルコール10グラム程度の飲酒は、認知症のリスクを低減させる効果があることが報告されています。

 

この研究は、アメリカに住む約5900人の高齢者を対象に平均6年間追跡したもので、飲酒をしない人の認知症発症リスクを1としたとき、1日あたりアルコール10グラムの飲酒で認知症になるリスクは0.5程度。

 

つまり、まったく飲まない人の半分程度にリスクが下がっていたといいます。

 

アルコールには善玉コレステロールを増やしたり血管を拡張したり、血液をサラサラにしたりする働きがあるため、少量だとこれらが効果的に作用すると考えられるのです。

大量の飲酒は認知症の危険性を高めるが・・・

厚生労働省でも、アルコールと認知症の関係について示しています。

 

それによると、アルコール依存症の人や大量に飲酒する人には脳萎縮が高い割合で見られ、認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高める一方、少量ないし中等量の飲酒では認知症の原因にならないのみならず、認知症の予防になる可能性があるとも示していました。

 

また、若い頃の飲酒と認知症の関係を調べたフィンランドの調査では、中年の頃に飲酒をしなかった人、月に1回未満の飲酒をする人、月に数回以上の飲酒をする人に分類して、高齢になってからの認知症の有無を調べたところ、軽度認知障害の危険性が、月に1回未満の飲酒をする人と比べて飲酒をしなかった人では2.2倍、月に数回以上の飲酒をする人では2.6倍高くなることが示されました。

 

さらに、ハワイの日系人男性の調査では、中年時代の非飲酒者と大量飲酒者(1日に350㎖のビール4本相当を超える飲酒量)で高齢になったときの認知機能が最も低下しており、逆に1日にビール1本相当以下の飲酒量で最も認知機能の低下が少なく、少量ないし中等量の飲酒は高齢になって認知機能が低下する危険性を22~40パーセント下げるという結果でした。

 

これらの調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高める一方で、少量の飲酒は認知症を予防する可能性が示されているとしています。

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