様々な健康効果を持つビールだが、飲み過ぎは危険
薬は正しく用いれば病気を治しますが、間違った使い方をすると毒となり、命を奪うこともあります。ビールも同じように、アルコール飲料である以上は、飲み過ぎれば肝臓を悪くするなど健康を害してしまいます。
昔から「酒は百薬の長」というように、適量のアルコールはさまざまな健康効果を得ることができます。例えば、胃液の分泌を促して消化を助け、食欲を増進させます。また、血行を良くしたり、利尿作用があるので体内に溜まった老廃物を洗い流して、疲労回復につながります。
他にも、ストレス解消になったり、睡眠促進効果や鎮静効果がありますので、気持ちを落ち着かせて寝つきを良くしたりもします。
飲み過ぎはアルコール性肝炎や肝硬変の原因に
しかし、アルコールは飲み過ぎると肝機能障害を引き起こします。摂取したアルコールは、約20パーセントが胃の毛細血管から、残りの約80パーセントは小腸から吸収されて血液中に溶け込んで全身を巡った後、肝臓へと運ばれます。
肝臓では、アルコール脱水素酵素(ADH)の働きで、アルコールが有害なアセトアルデヒドに分解されます。さらに、アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の働きで無害な酢酸に分解され、 酢酸はアセチルCoA合成酵素の働きで分解され、最終的には水と二酸化炭素にまで無害化されて、ようやく吐く息や尿、汗と一緒に排泄されます。
二日酔いになるのは、最初の分解で発生したアセトアルデヒドによるものです。この物質は毒性が強いために悪酔いの原因になります。
アルコールの分解過程は一定の速度で進むため、飲む量が多過ぎたり、ピッチが速いと分解が追いつかず、全身にアセトアルデヒドが回ったり、アルコールが肝臓を素通りして脳に達したりします。これが、脳の嘔吐中枢を刺激して、吐き気や頭痛、悪酔いなどを引き起こしています。
飲み過ぎて二日酔いになるだけなら良いのですが、長期にわたって飲み続けていると、やがて肝臓が障害されてきます。平均的な日本人の場合、ビール1本を肝臓で分解するには約3時間かかります。ですから2本、3本と酒量が増えれば、さらに肝臓に負担をかけることとなります。
大量の飲酒を長年続けている人は、肝臓の細胞に中性脂肪が溜まる「脂肪肝」ができ、やがてアルコール性肝炎になる危険性があります。さらに進めば、肝硬変になって肝臓の機能が低下してしまいます。特に日本人は、欧米人に比べてアルコールに弱い体質のため、肝臓に負担をかけやすいので、飲み過ぎには注意が必要なのです。