ラットにビールを投与すると、抗酸化力が上昇
前回に引き続き、ビールが健康に良い理由を見ていきましょう。
キリンホールディングスと東北大学が共同で進めた研究によっても、ビールの抗酸化作用が証明されています。
この研究は、抗酸化作用が強いといわれている赤ワインとビールを比較したもので、アルコール換算で同じ量になるように調整したビールと赤ワインの水溶液をラットに投与し、活性酸素を発生させる試薬を加えた後、ビタミンEがどれくらい残っているのかという割合から、血漿(血液から赤血球や白血球、血小板を取り除いた成分)の抗酸化力を評価したものです。
その結果、ビールを投与したラットの血漿では、水を投与したラットの血漿と比較してビタミンEの残存率が有意に高く、血漿の抗酸化力が活性していたことを示していました。この活性の上昇は、赤ワインを投与したときと同じ程度でした。
ポリフェノールの含有量も赤ワインより多い
また、同じ実験を試験管内で行ったところ、赤ワインの抗酸化活性はビールより4~5倍強く、ポリフェノールの含有量も赤ワインが1.5~2倍多いという結果が出ました。つまり、ここまでの実験では赤ワインの方がビールよりも抗酸化力が強いことを示したのです。
ところが、これを「体内での吸収性」という観点から比較してみると、ビールを投与した群は、投与後1時間、4時間後の2回にわたって抗酸化活性の上昇が認められたのに対して、赤ワインを投与した群では、1時間後にのみ抗酸化活性の上昇が認められました。
つまり、ビールには、赤ワインとは体内での吸収性の異なる抗酸化成分が含まれている可能性が示されたのです。この抗酸化成分とは、ホップに含まれる「イソフムロン」というポリフェノールの一種であることがわかりました。
このイソフムロンの他にも、ホップには「キサントフモール」というポリフェノールが含まれており、この成分にも抗酸化作用や抗がん作用、骨分解抑制作用(骨粗しょう症予防)などがあることも多くの研究で確認されています。