大手牛丼チェーン店が繰り広げた値下げ競争
以前、ニュースにもなった某牛丼チェーンA社の労働環境問題。「早い」「安い」「ボリュームたっぷり」の牛丼は、忙しいサラリーマンや食べ盛りの若者たち、はたまた給料日前のファミリーなど幅広い層の味方ですが、その価格を巡ってはかねてより大手3社がしのぎを削ってきました。A社が並盛りを60円値下げすれば、負けじとB社が80円の値下げをし、C社はプレミアム盛りを50円値下げする……というように、互いに一歩も譲らぬ値下げ競争を繰り広げていました。
その背景にあるのは、徹底したコストカットと効率化です。特に値下げ合戦の仕掛人であるA社では、極限まで店員を減らし、最少の人数でお店を回していました。深夜営業になると、店員一人で調理から接客から皿洗いまで、全てをこなす「ワンオペ」を行っていた店舗もあったようです。
オーバーワークの結果、サービスが行き届かず…
もちろん店員はオーバーワークで疲弊します。客へのサービスが行き届かず、クレームが増えていきます。すると、店員は通常業務のほかにクレーム対応にも時間を取られ、心が折れていきます。店の評判も落ちます。「あそこは安いばっかりでサービスがなってない」「不愉快な思いをするくらいなら、ちょっと高くても別の店に行ったほうがいい」――そういってお客様が離れていくケースは多々あるのではないでしょうか。
さらに悪いことに、夜中のワンオペで防犯が手薄なところを狙っての強盗事件も起きました。この段階に至ってA社は「ブラック企業」との烙印を押され、社会から厳しい批判を受ける結果となりました。その後、それまでの経営を反省し改善を約束しましたが、一度、人々の中に刷り込まれたマイナスイメージは拭いがたく、いまだに以前のような好業績には戻っていないと聞くと、とても他人事、対岸の火事だとは思えません。