馬車馬のように走り続けた先に見える〝限界〞
雑な営業にありがちなパターンとしては、「契約を取ったら終わり」で顧客のフォローをしなくなることです。営業マンたちはどんどん新しい仕事を取らなければいけませんから、お客様との契約が済んだ時点で「目的達成」となり、次の営業先へと意識が移ってしまうのです。これは、お客様側としては大変面白くありません。極端に言えば「契約したら、ハイ終わり」で投げ出されたような気持ちになります。そのうちお客様の心が離れ、本来であればいただける次の契約の機会を喪失することになるのです。
また、ノルマのプレッシャーに負けてしまうと、受注を取りたい気持ちが先走り、お客様に強引に契約を結ばせてしまうということがあります。こうした不信感や不安感は後々、大きな不満となり残りますから、営業マンはおろか会社全体の評判も落とすことになってしまいます。
それでも、営業マンたちは会社から「ノルマ、ノルマ」と言われ続けます。馬車馬のように走り続けた先に彼らが見るのは、〝限界〞です。体力の限界から辞めていく人、もうこの地域でこれ以上の受注は無理と判断して辞めていく人、ノルマの重さに耐えかねて辞めていく人……いずれにしても、企業の最前線で働く営業マンは消費されて終わるという、悲しい結末が日常的に起きているのです。
8割以上の営業マンは「転職」を考えている
世の営業マンの多くが実際に転職したり、転職を考えたりしています。株式会社キャリアデザインセンターCDC総合研究室の「営業職のキャリア意識調査」で、営業職を対象に「転職の意向」を聞いたところ、次のような結果が出たそうです。
● 具体的に転職先を探している 43・0%
● すぐに転職したいが、行きたい会社・仕事がない 21・2%
● なんとなく転職を考えているが、具体的ではない 19・9%
● あまり転職は考えていないが、いい会社・仕事があれば考えてもいい 11・6%
● 今のところ転職する気はない 4・3%
実に、84・1%もの営業マンたちが転職を考えているということです。
営業という仕事は、お客様から「受注」を取ってくる仕事です。その営業職が長続きせず、すぐに辞めていくとなると、企業の将来は非常に暗いものになってしまうでしょう。
営業を選んだ理由は「特技がないから」「何となく」
「営業」という職業は、世間一般には「ノルマがあって大変そう」「お客様に煙たがられたり、受注を取るのに頭を下げたりして辛そう」というイメージがあるようです。営業をやってみたいかと聞かれたら、「どちらかというとやりたくない」というのが、多くの人の意見ではないでしょうか。
私の周りを見てみても、「どうしても営業をやりたくて入社しました!」「営業が大好き」という人は、残念ながらほとんどいませんでした。たいていが「資格も持っていないし特技もない。自分には他にできそうな仕事もないから」という消去法であったり、「最初に何となく営業になって、そのまま続けている」という理由で営業をやっている方が多かったと思います。
あとは、インセンティブの魅力でしょうか。営業職は基本給は低いものの、たくさん受注を取れば、その分インセンティブが多くもらえるという給与の仕組みになっている会社がほとんどです。私もインセンティブに惹かれたクチなのですが、実はこのインセンティブ制が営業マンの心を蝕む一因にもなり得ます。なぜインセンティブが危険なのか、ピンと来ない読者もおられるかもしれませんので、私の体験談を通して少し説明しましょう。