営業マンの心を蝕む「不安定な収入、不透明な将来」
前回の続きです。
また、営業を続けにくいもう一つの理由として、先のキャリアが見えにくいという不安もあると思います。
「このまま営業職を続けていって、どんなキャリアアップが望めるのか」
「転職ばかりくり返してきたが、もうこの歳では次の転職は無理かもしれない。転職できたところで、条件は厳しくなるだろうし……」
「営業は体力勝負……年金がもらえる歳まで、今のまま働き続けられるだろうか」
営業マンの多くがこんな不安を抱えながら生活しているのではないでしょうか。
営業を3年ほどやって、営業マンを指導していくリーダーとなり自分のチームを持たせてもらって出世していくとか、営業の腕を見込まれて他社からヘッドハンティングされるという道もないわけではありませんが、実際にそのようなキャリアアップができる人は一部です。
こうした〝収入の不安定さ〞〝キャリアの希望が見えない〞という要素が、営業マンたちの心を蝕んでいきます。その結果、生活が荒れて借金やギャンブルに手を出し、首が回らなくなる人や、精神的に病んでしまう人などが営業職では決して珍しくありません。
営業マンが辞めると、関係を築いた顧客まで失うことに
営業マンが置かれている厳しい現状は、営業マン自身にとっても不幸ですが、会社にとっても不幸なことです。なぜなら、お客様の前に立つ最前線の営業マンが元気でないと、契約もなかなか取れないからです。
商品やサービスを買うお客様にしてみれば、覇気のない、何だか顔色も優れない不健康そうな営業マンからわざわざ買いたいと思うでしょうか。同じような商品やサービスがあるのなら、別のもっと元気のいい営業マンから買いたいと、私なら思います。お客様はあなたの会社から買おうが、別の会社から買おうが、商品やサービスや値段がさほど変わらないなら、どっちだっていいのですから。
もう一つ、離職率が高い会社が不幸なのは、ノウハウが蓄積されていかないことです。営業にもノウハウはあります。目標管理の仕方や、アポイントや商談のやり方といった事務的な仕事はもとより、会社にとって何よりも大事な〝顧客との繋がり〞が失われてしまいます。
営業とは人間関係です。これは簡単には構築できませんし、単に「顧客情報」といったような、文字で残せる性質のものでもありません。先輩の営業マンから後輩の営業マンへ、生の言葉や行動で伝えていかなければならないものです。
お客様の中には、「○○さんだから買う」という人が決して少なくありません。このような関係が構築されれば、相見積もりもなく契約をいただけるケースも増えて、時間的な効率も各段と上がっていきます。そして、お客様との関係構築においていい見本となる営業マンが増えていくので結果として会社の質は高まります。
反対に、この最前線の営業マンが辞めてしまうと、お客様の中に「今度の担当は大丈夫だろうか?」という不安が生まれてしまいます。どうせ一から営業マンとの関係を築かなくてはならないのであれば、せっかくだからこの機会に、他社の営業にも相談してみようかな、という心理になるのではないでしょうか。
そうなってしまうと、また会社も新たな営業担当者も熾烈な競合争いの渦中に戻る羽目になり疲弊していくのです。