入社2ヶ月目にして月収100万円を達成したが…
前回の続きです。
それでもお願いして採用してもらった以上は「一日に300軒回れば稼げる」と言われたことを信じ、まず1カ月は全力でやろうと決心しました。そうやって諦めずに続けていると、一人二人と話を聞いてくれるお客様が現れ、なかには「貴方は雨の日でも一生懸命頑張っているね」と契約をしてくれる方も出てきて、初月から1000万円近くの契約を取ることができました。気づけば本当に2カ月目の給与が100万円を超えていました。何のコツも裏技もなく、ただひたすら真面目に、玄関のベルを押すことをくり返していただけです。
このときに「営業の仕事は辛いけれど、やればやっただけ稼げる」ことを実感し、少し自信がつきました。それからも私は知識や技術面で劣る部分をカバーしようと真面目に一日300軒の訪問を続け、順調に売上を伸ばしていきました。しかし、それでも「これは一生やる仕事ではない」といつもどこかで感じていました。
「基本給だけでは生活していけない」
どうして一生続けられないと思ったかというと、その理由の一つがインセンティブの比率が高い給与形態による生活の不安定さでした。入社以来の好調は続いてはいたものの、月が替われば売上の保証なんてどこにもなく、もし売上が落ちれば売れない営業マンのように悲惨な状態になることが、とても他人事には思えませんでした。ですからいくら数字を出しても、上司に褒められても、精神的な安らぎは手に入らないのです。それどころか将来に対する不安が大きくなっていく一方でした。
営業の給与形態は基本的に「固定の基本給+成績に応じたインセンティブ」です。受注を取れば取っただけ、手にする報酬も多くなります。逆に受注が少ないときは報酬も減りますが、この制度には大きな落とし穴があります。一度、月に100万円の生活をすると、売上が落ちて収入が減っても生活レベルを下げられずに、借金をしてでもその生活を維持したい、来月その分頑張って稼げばいい――都合よく考えて、気がつけば100万円の給与を稼げる月があったとしても、借金が増えてしまうというケースは身近でも多々ありました。これが、営業はギャンブルに似た部分があると思われている所以です。
営業は、一日の定量の仕事を気分や結果次第で変えてしまうようでは、安定的に契約を見込むことが難しい仕事です。真面目に頑張っていても契約が取れないときもありますし、逆に、さほど頑張らなくても契約が取れてしまうときもあります。これでは何を信じて仕事をしていけばいいのか、精神的な支柱が常に揺らぎます。この揺らぎを消すのは絶対量、どれだけ仕事をこなしたか、です。これができないと、いくら営業技術が優れていても大きく稼げる月と全然ダメな月との差ができて、生活そのものが不安定になってしまいます。
「今月はうまくいって100万円稼げたけれども、来月は基本給の20万円しかないかもしれない」
「先々月、先月と多く稼いで、つい気が大きくなってローンを組んだけれど、ずっと払っていけるだろうか」
「今は元気だからいいが、病気をして働けなくなったら……。基本給だけでは生活していけない」
来月の収入が保証されていないという不安は、とても大きなストレスです。