今回は、企業の売り上げが落ちる中で、目先のコスト削減に安易に頼ると、思わぬ悪循環に陥ってしまう危険性があることをお伝えします。※本連載では、自社の営業担当者を「売れる営業マン」にするにはどうすればよいのか、具体的なノウハウとともに紹介します。

「リストラができない経営者は甘い」とは言うが・・・

売上が落ちたら、経費を抑えないと会社が倒産してしまうことは誰もがわかっていることですが、一方でリストラという発想が頭をよぎれば、経営者として罪の意識が芽生え、その狭間で葛藤が始まります。大企業のように、社員一人ひとりの顔がわからないような組織に比べ、中小企業のように常に顔を突き合わせて仕事をしている関係性でのリストラは、する側の精神的負担も計り知れないものです。私自身もリストラをする立場だった時期がありますが、する側もされる側も大変苦しいものです。「会社存続のためにはやむを得ない」「リストラができない経営者は甘い」とか、コストカッターなどと英雄視される経営スタイルには、サラリーマン時代から違和感がありました。

 

そもそも論ですが、せっかく採用した社員のクビを切る事態にならないよう経営をするのが本質ですので、どうやって売上を上げ利益を出していくのか、理想論だけではどうにもならない現実に立ち向かう必要があります。資金、歴史(信用)がない会社は「他社とは違う経営の仕組み」を経営者それぞれが知恵やアイデアを絞って見つけ、構築していかなくてはならないと思います。

全ての業務が「後手後手」になってしまう危険性も

思うように収益が上がらないとなったとき、コストカット以外に経営者が選べる選択肢は、利益を増やすこと、つまり「営業のノルマ増」です。気合と根性を合言葉に、「とにかく売上を上げてこい!」と営業マンたちのお尻を叩き、商品・サービスを売り歩かせることです。そもそも売上が出ない状況なのですから、具体策なしに同じことを続けさせているだけでは、自然と言葉だけが強くなり、さらに悪循環に陥ってしまいます。結果は、よくて一時しのぎ、継続は困難なはずです。

 

このような負のサイクルに陥った経営者が、最後の手段としてリストラに踏み切るのでしょう。真っ先に候補に挙がるのが人件費でしょうが、仕事のできる優秀な社員の給料を抑え、できない人をリストラする。数字上では辻褄が合うものの、中小零細企業では会社と社員の間に溝ができるはずです。お互いの立場を考えれば必然ですが、最悪のケースはその優秀な社員までもが辞めてしまう結果になることです。さらに苦悩は続き、新たな社員の募集経費が増大し、結局はコストがかかってしまいます。しかし、超有名企業でもない会社にそもそも「一般的に言われている優秀な人」「輝かしい職歴」の人が面接に来てくれる確率は低いはずです。

 

この一連の流れの中で、一番損をするのはお客様になります。もちろん無駄な経費の見直しは常に行わなければなりませんが、今度は人材不足によりフォロー体制が一気に脆弱になり、お客様が望むタイミングでサービスを提供できなくなってしまったりと様々な問題が発生してきます。

 

一見、効率化によってコストが削減されたものの、人材不足のため顧客へ提供するサービスのレベルも下がってしまい、発生した問題への対応に必要以上に時間を要し、全ての業務が後手後手になってしまう。その結果、顧客が離れてしまうといった本末転倒が起こりがちです。顧客が減るから新規開拓に力を入れる、すると営業が必要以上に疲弊するという負のサイクルです。「それもしょうがない」と妥協してしまえば将来がなくなってしまいます。

本連載は、2016年10月28日刊行の書籍『見込みゼロ客をヘビーリピーターに変えるスゴい営業の仕組み』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

見込みゼロ客を ヘビーリピーターに変える スゴい営業の仕組み

見込みゼロ客を ヘビーリピーターに変える スゴい営業の仕組み

武蔵原 一人

幻冬舎メディアコンサルティング

「受注が取れない」「売上も伸びない」「営業マンは辞めていくばかり」――負のサイクルを断ち切り、激化する顧客争奪戦を勝ち抜くカギとなる「見込みのない顧客をリピーターに変える仕組み」づくりを3ステップで徹底解説しま…

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