今回は、会社の在庫は一刻も早く「現金化」すべき理由について見ていきます。※本連載では、株式会社スペースワン・代表取締役・徳永貴則氏 監修、株式会社エッサム編集協力、資金繰りを支援する税理士の会著、『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』(あさ出版)から一部を抜粋し、金策に追われることなく、「資金繰り」のいい会社を目指すための実践的なノウハウを紹介します。

大手企業が行っている「決算セール」の狙い

ここまでの話で、在庫の管理がひじょうに大事であるということがお分かりいただけたと思います。

 

理想は、在庫をきちんとお金に換えることです。

 

とはいっても、このご時世、なかなか思うようには売れません。

 

それでは、どうすれば売れるのかを考えましょう。

 

大手企業が行っているのは、値引きです。デパートや家電量販店、衣料品店などでは、決算間近になると「決算セール」を企画し、2割〜3割引、ときには5割以上の値引きで商品を出しています。在庫にある商品を一刻も早くお金に換えるためです。

 

しかし経営者の中には「値引き」を極端に嫌う人がいます。

 

「5割も値引きしたら、売れてもたいした利益にならない。3割以上の値引きは絶対にしたくない」

動きがない在庫は「含み損」になる

しかし、よく考えてください。

 

いま倉庫にある商品は、以前は1つ1000円で売れていたとします。しかし売れなくなって倉庫で眠っているいま、その商品には本当に1000円の価値があるのでしょうか。帳簿の上では1つ1000円だとしても、市場に出せば500円以下でなければ買ってもらえない商品になっているかもしれません。その場合、商品1つあたり500円の損を抱えているのと同じことになります。

 

売れない在庫を倉庫に放置していると、会社の資産を正しく把握できなくなり、資金が足りなくなったときにツケがきます。

 

たとえば銀行に融資を申し込むとき、銀行は企業を「格付け」して、融資の可否や金利の設定などを行います。格付けのベースになるのは決算書などの会計書類ですが、銀行員は当然、在庫の数字をそのまま受け取りません。動きがない在庫は価値が低下しているとみなして「含み損」という修正を加えて資産を計算しています

 

もちろん銀行も、その会社の倉庫にあるすべての商品の適正価格を把握しているわけではありません。倉庫に足を運んで全部の商品を確認するようなこともしません。そのため「在庫の数字をかさ増ししてもバレないだろう」という考えが頭をよぎるかもしれませんが、それは『粉飾決算』であり、違法行為です。

 

古い在庫はさっさと現金化して、倉庫には常にフレッシュな商品だけを入れるようにしましょう。不要な在庫がなくなれば、その分、新しい商品のために倉庫のスペースを使うことができるので、一石二鳥です。

本連載は、2016年6月23日刊行の書籍『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

会社の資金繰り 絶対やるべきこと、知っておくべきこと

会社の資金繰り 絶対やるべきこと、知っておくべきこと

徳永 貴則 風張 広美 平井 敬士 窪木 康雄 小高 正之 土江 誠一郎 森 敏夫 浅井 政晃 高田 寛 岸 健一 飯塚 正裕 横田 昭夫 中村 泰宏 日比 亮太郎 舟生 俊博 糊 智至 佐々木 康二 南村 博二

あさ出版

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