今回は、金融機関から「運転資金」を借りる際の留意点について見ていきます。※本連載では、株式会社スペースワン・代表取締役・徳永貴則氏 監修、株式会社エッサム編集協力、資金繰りを支援する税理士の会著、『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』(あさ出版)から一部を抜粋し、金策に追われることなく、「資金繰り」のいい会社を目指すための実践的なノウハウを紹介します。
必要な運転資金の額を把握しているか?
手持ち資金を増やす方法として手っ取り早いのは、金融機関から融資を受けること、つまり借金をして現金を増やすことです。
借金をすれば手元の資金は豊かになりますが、返済金額が増えます。
「返済を気にするよりも、現金を多く持っておくことが大事」
「手元の資金がギリギリでも、借金して返済に追われるよりマシ」
迷うかもしれませんが、正解は、どちらでもありません。
大事なことは、正確な運転資金を把握して、無理のない返済額で借り入れることです。
4章(※書籍参照)で詳しく説明しますが、会社を回すために必要な運転資金の金額は「売掛金+在庫−買掛金」です。この金額以上の借入金があると、一時的には余裕ができても、すぐに返済が重くなり、お金が回らなくなります。
普段から金融機関と「良好な関係」を築く
さきほど述べたように、不良債権が多い、過剰な在庫がある会社は、運転資金の金額が上がってしまいます。すると借入額も増えてしまいますが、実際の資金はその金額以下しかないため、すぐに返済が追いつかなくなるのです。
「売掛金が不良債権になっていないか」
「在庫に死に筋はないか」
この2つを常にチェックし、本当に必要な運転資金の金額を意識した借入ができれば、月々の返済に追われることなく、銀行融資を上手く活用できるようになります。
また、「無借金経営ではなく、金融機関から借金をして経営するほうが良いのですか」という質問をよく受けます。
金融機関からお金を借りられるときに借りておく。それは間違いではありません。
銀行から「融資をします」という話があったとき「うちは借金する必要がないからいりません」とつっぱねていたら、経営が危なくなって本当に必要になったときに「貸してください」と言っても、すぐには融資がおりません。必要なときにお金を借りることができなければ、会社の存続が危うくなります。
ただし、さきほど述べたように、運転資金以上の借入をすると、返済に追われることになります。どれだけの金額なら返済が苦しくならないか、会社の状況をしっかりと見極めたうえで借入を行い、いざというときに助けてもらえるよう、普段から複数の金融機関と良好な関係を築いておきましょう。
株式会社スペースワン
代表取締役
1972 年佐賀県出身。明治大学政治経済学部を卒業し、大和銀行(現りそな銀行)に入行。都内を中心に法人店舗にて主に法人融資先の新規開拓業務を行ってきた。本店融資部での経験もあり、審査部門での経験も豊富にある。2000 社ほどの銀行融資に携わった経験を活かし、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。企業の「資金繰りアドバイス」にフォーカスを当てて、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。中小企業のみならず、税理士をはじめとした士業をクライアントとし、顧問先への助言、全国にて講演活動を行っている。教科書的な経営指導、融資アドバイスではなく、経営者に分かりやすく実践的なコンサルティングに定評がある。2012 年10 月に「金融税理士アドバイザー講座」を立ち上げ、税理士向けに銀行融資についての講演や金融知識の講義を行っている。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載知識ゼロから実践! 会社の「資金繰り」を改善する講座
浅井政晃税理士事務所
税理士
大学卒業後インテリアメーカーにて営業として5年間勤務した後、税理士業界に飛び込んだ異色の税理士。平成22年税理士登録。現在はボランティア活動も精力的に行っており、大田区を中心に専門家向けの勉強会や市民向けの無料相談会などの事業を行う一般社団法人おおた助っ人の理事も務めている。
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中央シティ税理士法人
税理士・特定行政書士・MBA・登録政治資金監査人
都市銀行役員、総務大臣政務官秘書、参議院外交防衛委員長秘書を歴任。CFG中央シティフィナンシャルグループ代表。早稲田大学賛助代議員、神奈川工科大学大学院講師。日本で単独第1号の内閣総理大臣宛の「内部統制報告書」(J-SOX)を完成。読売、朝日、毎日新聞連載。政府認定・経営革新等支援機関。
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