今回は、会社の「売掛金・棚卸資産」の虚偽報告について見ていきます。※本連載では、株式会社スペースワン・代表取締役・徳永貴則氏 監修、株式会社エッサム編集協力、資金繰りを支援する税理士の会著、『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』(あさ出版)から一部を抜粋し、金策に追われることなく、「資金繰り」のいい会社を目指すための実践的なノウハウを紹介します。

「不良債権」があるだけで、格付けの評価は下がる

会社から融資の申し込みがあったとき、金融機関は決算書などの書類をもとに審査を行います。

 

しかし決算書の数字を鵜呑みにしてはいけません。

 

売掛金が多い場合、取引先を調べて、焦げ付いていないか確認します。売掛先が倒産していた場合は回収不能の不良債権になっていますから、含み損失として売掛残高から差し引かれます。こうした含み損失が一つでもあると、他の科目もすべて「疑わしい」と思い、さらに厳しくチェックされます。

 

第7回で「貸倒損失を計上しなければ赤字を隠せる」と思っている経営者の話をしましたが、その結果がこれです。ほとんどの場合、金融機関にばれてしまいます。不良債権があるだけで格付けの評価が下がるというのに、虚偽の報告をすれば、さらに信用を失います。売掛金の焦げ付きは可能な限り回避し、不良債権化してしまった場合は正直に報告しなければいけません。

銀行は企業の「棚卸資産」をどう判断するのか?

棚卸資産も同様です。

 

銀行では、融資を申請した企業の「棚卸資産回転期間(「棚卸資産」÷「平均月商」)」を計算し、業界平均の数字よりも多い分は「商品価値がない(死に筋)」と判断して、差し引いて検討します。

 

もちろん同じ業界でも、会社ごとに事情は異なります。たとえば一つの製品を作るために、5つの部品しかいらない会社と、50種類の部品が必要な会社では、倉庫に常備されている部品の量が異なります。

 

書類上ではひとくくりに「在庫」と表現されてしまうため「この業種で、こんなにも在庫が多いのはおかしい」と判断されてしまいますが、在庫数が適正であるなら、在庫の中身について書類を使って説明する必要があります。ただし単に黒字に見せようとして期末の棚卸をかさましした場合は、銀行側で差し引かれてしまうため、意味がありません。

本連載は、2016年6月23日刊行の書籍『会社の資金繰り 絶対!やるべきこと知っておくべきこと』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

会社の資金繰り 絶対やるべきこと、知っておくべきこと

会社の資金繰り 絶対やるべきこと、知っておくべきこと

徳永 貴則 風張 広美 平井 敬士 窪木 康雄 小高 正之 土江 誠一郎 森 敏夫 浅井 政晃 高田 寛 岸 健一 飯塚 正裕 横田 昭夫 中村 泰宏 日比 亮太郎 舟生 俊博 糊 智至 佐々木 康二 南村 博二

あさ出版

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