「助かっていたのは本当。でも…」娘が打ち明けた理由
突然の言葉に、節子さんは「私、何か悪いことをした?」と尋ねました。美咲さんは少し迷ったあと、これまで言い出せなかった事情を話し始めました。
「今まで助かっていたのは本当だよ。でも、子どもたちも大きくなったから、少しずつ家のことを自分たちでやるようにしたいの」
美咲さんの家では、半年ほど前から家族で家事を分担するようになっていました。
長女は洗濯物をたたみ、長男は食卓の片付けを担当。夫も週末の掃除と買い出しを引き受けています。
しかし、節子さんが来ると、孫たちは「おばあちゃんがやってくれるから」と自分の担当を後回しにすることがあったそうです。
「お母さんが悪いわけじゃないんだけど、せっかく決めたことが続かなくなっちゃって」
さらに、美咲さんは、母親が来る日に合わせて家を片付けたり、食材の使い道を説明したりすることにも、少し負担を感じていました。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、日常生活で家族や知人などから頼られる内容として、「家事」を挙げた人は35.9%、「子や孫の世話」は26.0%でした。高齢者が家族の暮らしを支える場面は、決して珍しくありません。
節子さんも、娘に頼られることを励みにしてきました。だからこそ、突然手伝いを断られた寂しさは簡単には消えませんでした。
「もう私の出番はないんだなって。頭ではわかっても、少し悲しかったですね」
その気持ちを伝えると、美咲さんは「来てほしくないわけじゃないよ」と答えました。
「毎週家事をしに来てもらうのは、そろそろ終わりにしたいの。今度は一緒にご飯を食べたり、出かけたりしたい」
節子さんは、それから毎週の訪問をやめ、月に1、2回、娘一家と食事をするようになりました。孫たちも自分の役割を覚え、以前より積極的に家事を手伝っているそうです。
空いた土曜日には、しばらく休んでいた地域の合唱サークルへ再び通い始めました。
「娘の家に行かない週末は、最初は手持ち無沙汰でした。でも、私にも自分の時間があるんですよね」
家族への手助けは、生活環境や子どもの成長によって必要な内容が変わっていきます。長く続けてきた習慣ほど、変化を受け入れるには時間がかかるものです。親子がお互いの気持ちを伝え、その時々に合った関わり方を考えることで、無理のない関係を続けやすくなるでしょう。
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