「このまま何ヵ月も続くのか」夫婦が決めた同居の条件
同居から2ヵ月ほどたったある日、敏夫さんは娘に生活費のことを切り出しました。
「彩香、これからどうするつもりなんだ? ずっとここにいるなら、少しは生活費を入れてほしい」
彩香さんは驚いた表情を浮かべました。
「今はお金に余裕がないの。家族なんだから、もう少し助けてくれると思ってた」
その言葉に、久美子さんは黙り込んでしまったそうです。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の可処分所得が22万1,544円、消費支出が26万3,979円。平均で月約4万2,000円の不足が生じています。年金を中心に暮らす高齢世帯にとって、支出の増加は貯蓄の取り崩しにつながります。
敏夫さん夫婦も、娘たちを受け入れたこと自体を後悔しているわけではありません。ただ、毎月約6万円増えた生活費と、久美子さんに集中する家事の負担を、この先も引き受け続けることには不安がありました。
その晩、夫婦は改めて娘と話し合いました。
彩香さんは、夫との関係がすぐには修復しそうにないことや、子どもたちの生活をどうするか決められずにいることを打ち明けました。
そこで敏夫さんは、今後3ヵ月を目安に住まいと仕事について具体的に考えてほしいと伝えます。
また、当面の生活費として月2万円を家計に入れること、子どもたちの衣類や学校用品などは原則として娘が負担することも決めました。
家事については、彩香さんが休みの日にまとめて洗濯や掃除を担当し、夕食の準備もできる範囲で分担することに。
「最初に『困っているなら好きなだけいなさい』と言ってしまったのがよくなかったのかもしれません。私たちにもできることと、難しいことがあるので」
久美子さんはそう振り返ります。
現在も5人での生活は続いていますが、彩香さんは勤務時間を増やせる仕事を探しながら、別居後の生活について夫と話し合っています。子どもたちの今後についても、学校や住まいの条件を整理しているところです。
敏夫さん夫婦は、娘たちが落ち着くまで支えるつもりです。ただし、自分たちの老後資金を際限なく取り崩すことは避けたいと考えています。
「孫と一緒に食卓を囲めるのはうれしいんです。でも、私たちももう72歳ですからね」
家族が困難に直面したとき、実家は心強い居場所になります。一方、同居が長期化すれば、生活費や家事、住まいの使い方にも調整が必要になります。親子であっても、援助できる期間や費用の分担を早い段階で話し合うことが、互いの生活を守ることにつながるでしょう。
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