(※写真はイメージです/PIXTA)

親が遺した不動産を巡り、相続人の間でトラブルが起きるケースは珍しくありません。近年は、利用予定のない実家の扱いに頭を悩ませる人が後を絶ちません。法改正により新たな救済策が整備されつつある一方で、制度の利用には予期せぬ負担が伴うこともあります。ある男性の切実な体験を通し、実家相続に潜む盲点を考えます。

国が引き取ってくれるはずが…相続人を悩ませる空き家処分の現実

都内の会社員・高橋健一さん(58歳・仮名)は、半年前に亡くなった父・義雄さん(享年86)から、木造一軒家の実家と預貯金約3,000万円を相続しました。都内に自宅がある健一さんは実家の売却を試みましたが、建物の老朽化や駅から遠い立地がネックとなり、買い手は見つかりませんでした。

 

「昔は名家と言われ、周囲も一目置くお金持ちだったんですが……最近じゃ過疎化が進んで、誰も欲しがらない」

 

そこで健一さんが検討したのが、相続した土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」でした。しかし、法務局に相談したところ、建物が残っている土地は申請できず、原則として建物を解体する必要があると説明されました。

 

業者に見積もりを依頼すると、解体費用は約350万円に達しました。

 

「国が引き取ってくれるんじゃないのか。手放すだけなのに、こんなにお金がかかるとは」

 

健一さんは、思わぬ費用負担に戸惑ったといいます。

 

業者に見積もりを依頼したところ、解体費用は約350万円に達しました。「国が引き取ってくれるんじゃないのか」と、健一さんは思わず声を漏らしたといいます。

 

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は約900万戸、総住宅数に占める割合は13.8%と、いずれも過去最高を記録しました。このうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は約385万戸に上ります。

 

また、国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」によると、空き家を取得した方法として「相続」を挙げた世帯は57.9%でした。親などから家を引き継いだものの、自分では住まず、売却や活用にも踏み切れない。こうした空き家の存在は、所有者自身の負担にとどまらず、地域の住環境や防災面にも影響を及ぼす問題となっています。

 

こうした問題への対策の一つとして、2023年4月に始まったのが「相続土地国庫帰属制度」です。相続や遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たし、審査で承認されれば、所有権を国庫に帰属させることができます。ただし、どのような土地でも引き取ってもらえるわけではありません。制度を利用するには、申請要件を満たしたうえで、審査手数料や負担金などの費用も負担する必要があります。

 

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